(※画像はイメージです/PIXTA)

1923年9月1日の関東大震災からちょうど100年を迎えます。この間、2度の大震災をはじめとして日本各地で多くの大地震が発生しました。2014年には政府が首都直下型地震の発生確率について「30年で70%」と発表しています。そんななか、都市部に多い「マンション」はきわめて危険な状態にあり、すぐにでも対策を講じておく必要があります。2つのデータを紹介しながら解説します。

マンションの「修繕積立金」の不足

国土交通省「平成30年(2018年)度マンション総合調査」の結果によると、修繕積立金が計画よりも不足していると回答したマンション管理組合が34.8%にのぼります。3分の1を超えています(同調査報告書P.9参照)。

 

ただし、もしも今同じ調査を行ったら、この数値はもっと高くなる可能性があります。というのも、ここ数年は円安に資材不足が重なり、建築資材が高騰しているからです。また、この数値は「計画よりも不足している」というものであり、計画が十分なものかどうかは考慮に入っていません。修繕積立金が足りない管理組合はもっと多くなると考えられます。

 

さらに、修繕積立金の算定の基礎となる「長期修繕計画」は、基本的に「経年劣化」を想定したものにすぎません。大地震の被害を想定したものではないのです。このことからすれば、もしも、マンションが大地震に見舞われた場合、修繕積立金では到底賄えないケースは非常に多くなることが想定されます。

 

これに対し、修繕積立金の増額で対応しようとするのはあまり現実的ではありません。なぜなら、修繕積立金の改定は入居者(区分所有者)の負担増につながります。管理組合の総会決議で承認を得ることは難しいといわざるをえません。マンションの入居者には、ローンの支払を負担に感じている人や、限られた年金収入で生活する高齢者もいます。それらの人々にとっては、死活問題になる可能性すらあります。

 

このように、もしもマンションが大地震で損壊した場合には、修繕費用が不足するケースが多発すると考えられます。そして、現状、修繕費用の不足を改善する有効な方法は見出し難い状況です。

 

修繕積立金の不足を補うには「地震保険」しかないが…

では、どうすればよいのでしょうか。最も有効な方法の一つは、管理組合として、マンションの「共用部分」に「地震保険」をかけることです。

 

地震保険は火災保険の「特約」として加入するものです(地震危険補償特約)。地震保険を付保すると、最大で、火災保険で受け取れる補償の上限額(保険金額)の50%を受け取れます。損害の程度は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に分けられ、段階ごとに保険金の上限額が設定されています(【図表1】参照)。

 

日本損害保険協会「地震保険特設サイト」より
【図表1】地震保険の補償内容(建物) 日本損害保険協会「地震保険特設サイト」より

 

マンションの場合、注意しなければならないのは、入居者が居住する「専有部分」と、エントランス、ロビー、廊下、階段、エレベーター等の「共用部分」があり、所有権が異なるということです。

 

「専有部分」は各住戸の入居者が所有権を持っており、個別に地震保険(火災保険の「地震危険補償特約」)に加入することができます。これに対し、「共用部分」はマンションの管理組合が所有・管理するものです。したがって、組合名義で別途、保険加入する必要があるのです。

 

マンションの共用部分(基礎、柱、壁、屋根)は、建物としての根幹をなす部分です。地震保険においても、建物の「全損」「大半損」「小半損」「一部損」は、基礎、柱、壁、屋根等の基本的な構造部分を対象として判断されます。したがって、各住戸の入居者が個別に地震保険に入っていても、かんじんの共用部分に地震保険がかかっていないと、あまり意味がありません。

 

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