本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、「土地活用」に関する基本事項を解説します。

注目が集まる「資産が生み出すお金」

勤労に対する考え方が真摯な日本においては、「投資」というと、「ひとにぎりのお金持ちが、ラクして儲ける」という概念が定着していた。私が通っていた小学校にも二宮金次郎の像があり、「汗水たらして働き、勉強せよ」と語りかけていた(ように、思えた)。

 

バブルが崩壊し、証券会社・金融機関などが破綻しはじめ、国は国民の資産を守ってくれないという思考が広まった。2005年4月にはペイオフが解禁となり(特例措置がなくなり)、1000万円を超える預金は守られなくなった。年金制度の先行きが怪しくなり、老後の資金の不安を多くの国民が抱いている。「老後は国が守ってくれる」から「老後の暮らしは自己責任」となってしまった。

 

また、2000年ごろにベストセラーになったロバート・キヨサキ著『金持ち父さん・貧乏父さん』では、高学歴で勤勉に働く実の父さんよりも、高卒の実業家で不動産投資を手広く行う父さん(ビジネスの師匠)の方がお金持ちであると描かれており、そこでは投資や出資により資産を増やし、その資産が生み出すキャッシュフローにより豊かな生活が送れることが書かれてある。

 

「しっかり勉強して、大企業で汗水たらして働いて」も、それほどお金持ちになれないと、二宮金次郎理論が打ち砕かれたのだ。こうした風潮の中で、株式投資や不動産投資あるいは土地活用という「資産が生み出すお金」に注目が集まっていく。

インカムゲインを狙うのが一般的な日本の不動産投資

投資には、何かを購入してその値上がりを期待する=キャピタルゲインと、資産が生み出す=インカムゲインという2つのもうけ方がある。

 

株式を購入し、その株価が値上がりして、売却すれば、その差が利益(キャピタルゲイン)となる。また、株式を保有すれば、年に一、二回の配当が1株当たり○○円という形で貰える(インカムゲイン)。あるいは、株主優待も広い意味ではインカムゲインと言える。

 

不動産投資においては、例えばマンションを買って、そのマンションが買値よりも高く売れれば、「キャピタルゲインを得た」となる。現在の日本においては、東京都心や大阪の一部でしか見られないが、アジアの後進国では今でもキャピタルゲインをねらえる可能性がある。また、賃貸用住宅、あるいは賃貸用のワンルームマンションを所有して、その入居者から得られる賃料はインカムゲインとなる。

 

株式でも不動産投資でも、その価格上昇・下落(つまりキャピタルゲインorロス)に注目する投資家が多いが、今の日本においては、株式市場は先行き不安定であるし、不動産もよほどのことがない限り価格が大幅上昇することはないだろう(例えば、将来新幹線の駅ができることを事前に察知して、その周辺の土地を買い漁るなどすれば、別だが)。

 

今の日本の不動産投資においては、インカムゲインを狙うのが一般的だ。このキャピタルゲインもインカムゲインも共に、ゲイン(=利得)であるが、お金を使って(あるいは借りて)投資したモノからの利得は、リターン(収益)と呼ぶ。

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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