今回は、相続対策や収益確保を狙って土地活用を始めるうえで、具体的にどのように考えればいいのかをお伝えします。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、「土地活用」に関する基本事項を解説します。

どんなきっかけで人は「土地活用」を行うのか?

この「土地活用」という言葉、「名前は聞き覚えがあるのだが、よくわからない」という土地オーナーも多いようなので、具体的な方法について紹介しよう。

 

まず、どんなきっかけで土地活用を行う人が多いのだろうか。

 

前回、述べたように、資産継承(相続)の際に適切な税務対策を講じていなかったために多額の相続税が課せられることのないように、その対策として、相続を見越した土地活用を行う土地オーナーは多い。

 

他には、再開発や区画整理、新しい幹線道路の建設など周辺の環境が大きく変わった際に、今まで未利用の土地が収益を生む土地に変わる場合がある。そうした時に土地活用に興味を持つというのも、よく見られる例だ。このような場合は、賃貸住宅だけでなく、流通小売店舗や飲食店舗として貸し出して賃貸収入を得るパターンも有効だ。

 

置かれている状況はそれぞれ異なるが、周辺の環境が変わったことで土地の価値が変化し、その土地をどのようなかたちで有効利用すればいいのだろうか、どうすれば収益性が高い土地活用になるのだろうかと考えることがスタートだ。

土地に建物を建てて貸すのか、土地だけを貸すのか

では、具体的に、どう検討すればいいのだろうか。

 

まず、「有効活用する」か「そのままにしておく」「自分で使う」の検討からスタートする。土地を新たな方法で活用するか、あるいは活用しないかということについて、まず検討しなければならない。

 

所有する土地を活用すると決めた場合、つまり何らかのかたちで自分が使わない状態の土地を誰かに貸す場合、二つのパターンがある。一つは、自らそこに、自分のお金で(あるいは銀行等で借りて)建物を建てて、それを貸すという選択肢。

 

もう一つは、土地だけ貸して、借り主(主に企業や個人)がそこに建物を建てる、という選択肢の二つだ。後者の場合は、投資金額はほとんどゼロだ。

 

活用しないという選択肢も加えると、「そのままにしておく」「土地に建物を建てて貸す」「土地を貸して借りた人が建物を建てる」の3パターンとなる。

 

「自分で使う、そのままにしておく」つまり残しておくという方法にも当然いくつかのパターンがある。

 

一つ目は、自宅用の用地としてそれを守っていく、自分で住むというものである。これは、将来資産の継承ということにもつながる。将来、子どもの成長や資産相続を考えると、息子や娘の自宅として引き継ぐ、あるいは広い土地を所有している場合、その一部を子どもに渡す、あるいは貸すといったことが想定される。

 

そのために、住むために所有しておくというパターンである。

 

あるいは(現在農地なら)、農地として持っておくというものである。農地の場合、宅地に比べて若干ではあるが税金が安く、節税メリットもある。しかし一方で、農地として保有するためにはいろいろな手続きが必要になり、また、別のことに転用しようとすると煩雑な手続きを踏まなければならず、すぐ使いにくいような状態にあるといえる。

 

また、農地で残してそれを継承する場合、昨今では跡継ぎがなかなかいないという問題もある。

 

一方で、更地のまま所有する場合、一番大きなメリットとしては売りやすいということがあるが、最大のデメリットは税金の負担が大きいということである。固定資産税、都市計画税が評価額そのまま適用される。

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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