(※写真はイメージです/PIXTA)

老後生活の基盤となる公的年金。日本人であれば国民年金は強制加入のため、原則65歳から年金が受け取れます。しかし、この日本には「無年金」という人も。もし親が無年金の場合、子に与える影響とは……。本記事では、長岡FP事務所代表の長岡理知FPが、Tさんの事例とともに、無年金の親とその子に与える影響ついて解説します。

80代・無年金の両親を58歳・一人息子が支えるも…

Tさん 58歳 会社員 現在の年収850万円

Nさん 56歳 妻 専業主婦

Tさんの父親 85歳 無職

Tさんの母親 84歳 無職

 

Tさんの金融資産 1,100万円

退職金予定額 2,500万円

住宅ローン残債 1,200万円

 

Tさんは大手企業に勤務する58歳です。3年前に役職定年となり年収は1,500万円から大きく下がったものの、60歳の定年退職まで淡々と毎日を過ごしています。

 

娘が2人いて、どちらも都内の私立大医学部を卒業しました。奨学金を借りたものの貯蓄は大きく減少。住宅ローンもまだ1,200万円残っています。しかしまとまった退職金が見込めるため、夫婦の老後はなんとかなるだろう、と考えています。数年前に定年退職した先輩からは定年退職後も嘱託社員として働くほうが生活は楽になるよとアドバイスされたのですが、年収が半減するわりに仕事内容が変わらないため、正直モチベーションは上がりません。

 

Tさんの目下の悩みは、近くに住む80歳代の両親の生活費のことです。

 

Tさんが子供のころから両親は居酒屋を営んでいました。かつては大繁盛していた居酒屋で、当時は従業員も5人ほどいました。そのおかげで一人っ子のTさんは私立大に奨学金無しで進学することができたのです。

 

しかし居酒屋の経営は個人事業でどんぶり勘定そのもの。人当たりがよく人気の大将として名を馳せていましたが、客を喜ばせたいあまりに採算度外視のメニューを連発。売上額も正確に把握できず、利益が出ているのかどうかも不明でした。食べるに困ってはいなかったため、息子のTさんも特に心配はしていませんでした。

 

しかし15年ほど前、Tさんが43歳のときに衝撃の事実を知ってしまいました。

 

国民年金保険料を支払った記憶がない!?

両親は自分たちの国民年金保険料を支払っていなかったのです。

 

どのくらいの期間を滞納しているのかと聞いたところ、払った記憶がないと答える母親。払おうと思えば払えたはずですが、父親は「年金制度は破綻する」「どうせもらえない年金はあてにしない」という主張を繰り返し、督促を無視し続けていたようです。

 

納付した期間がほとんどなく、当然老齢年金は受け取れません。両親は「無年金」だったのです。しかし会社員とは違い両親は自分の店を持っていて定年退職もないため、Tさんはさほど心配していませんでした。

 

かつてのように大繁盛しているわけではないものの、夫婦で食べていける分は収入があるだろう、それに食べ物を扱っているので食事に事欠くことはないだろうと考えていました。

 

コロナの影響を受け、店が廃業…

しかし2019年からのコロナ禍によって、両親の店は大打撃を受けます。客がまったく来なくなり、日銭で回していた店は一気に苦しくなりました。コロナ禍の初期は居酒屋が営業しただけでも叩く雰囲気が世の中にありました。国や自治体からの給付金や協力金を受け取ってしのいでいたものの、次第に家賃の支払いも困難になり2021年に廃業。父親が83歳、母親が82歳の年でした。

 

 

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※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。

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