(※写真はイメージです/PIXTA)

裕福な家庭に生まれ両親の資産で贅沢をして過ごしたばかりに、まともな金銭感覚が養われずに高齢者になってしまう人も少なくないと、FP1級の川淵ゆかり氏はいいます。そのような人はやはり老後に痛い目に遭いやすく……。今回は、元バイオリニストのAさんの事例とともに、実家が裕福な人に待つ老後をみていきましょう。

社長令嬢として甘やかされて育った65歳の元バイオリニスト

Aさんは、今年65歳になる元バイオリニストの女性です。この方は知り合いに紹介された方で、私の事務所の相談者ではありませんが、ご本人の了解を得てご紹介します。

※一部脚色して記載しています

 

Aさんは、いわゆる社長令嬢で、高級靴のメーカーを経営する父親のもとで子どものころから優雅な生活を送ってきました。3歳年上の兄もいましたが、娘は1人だったために、両親からはそれこそ「蝶よ、花よ」と大事に育てられたそうです。

 

大学卒業後はドイツへバイオリン留学

3歳からバイオリンも習わせてもらい、才能が開花したそうで音楽大学に進んでバイオリンの技術を磨きました。さらに、大学を卒業後は、親に甘えてドイツに留学もしています。ところが、ドイツで恋人ができたAさんはバイオリンに身が入らなくなります。せっかくドイツに留学させてもらったAさんですが、留学とは名ばかりで、バイオリンの訓練は建前程度。甘えん坊で寂しがり屋のAさんは、地元でできた友達や日本からの友達たちと親からの仕送りで遊んでばかりの生活を送ってしまいます。

 

しかし、そんな素行が親の耳に入り、仕送りも打ち切られてしまい、とうとう帰国させられてしまいます。恋人が年下で、きちんとした仕事に就いていないことも父親を激怒させた原因です。

 

帰国後のAさんは、知人の紹介でオーケストラや結婚式等のイベントでのバイオリンの仕事をこなしていきましたが、積極的にバイオリンに臨むというわけではありませんでした。

 

ちなみに、Aさんは、どこの会社にも所属せずにフリーとして知り合いの紹介で仕事を受けていましたので、厚生年金には加入していません。なお、この時代の国民年金は強制加入ではなかったため、Aさんは27歳になって初めて国民年金に加入します*

*1989年に、20歳以上の学生についても、加入していない間に障害の状態になると無年金になるなどの理由から、国民年金に強制加入となりました。

 

28歳でお見合い結婚も、わずか3年で破綻

そして、28歳になったAさんは親の勧めでお見合い結婚をします。ですが、結婚しても家庭に静かに落ち着くようなタイプではなかったため、友人と買い物や食事に出かけてしまうような生活を送り続け、子どももできなかったせいか、結婚生活も3年で終了してしまいます。

 

Aさんはすでに31歳になっていましたが、実家に戻っても相変わらず両親に甘えた生活を続けていました。それまではアルバイト感覚で仕事の依頼に応じていましたが、両親や兄からもしっかりするように厳しい言葉を投げかけられため、自宅で子ども相手のバイオリン教室を開業しました。

 

Aさんは、本来は才能も技術もある音楽家ですし、父親が友人などに紹介してくれたおかげもあって、なんとかバイオリン教室も軌道に乗ってきたところでした。ですが、バイオリン教室といっても多くても十人程度の生徒さんですし、ほかの演奏依頼と合わせても月に20万円も収入はありません。子どものころからお嬢様気質のAさんは「お小遣いが稼げればいいわ」程度の考えですし、両親も「いい人ができたらまた結婚させよう」と思っていたくらいですから、それほどうるさくは言いませんでした。

 

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