前回は、法人の決算にあわせて「保険のメンテナンス」を行うメリットを見てきました。今回は、子どもがいない夫婦の相続で、甥や姪への代襲相続が発生する際の注意点について説明します。

子どもがいない夫婦で夫が亡くなったケース

具体策3「家族構成図」を書きましょう

筆者は、お客様のご相談を受けると最初に取り掛かるのが、「家族構成図」の作成です。いくらお話を伺っても、聞いただけではリスクが見えてきませんので、伺った情報をできるだけ全部、紙に書いてみるのです。

 

人間関係やそれぞれの抱えている事情を整理して視覚に入れることで、冷静になれます。「誰と誰が相続人なのか」「キーパーソンは誰なのか」「どの人が不満を抱えていそうか」などに気づきやすくなるのです。そうやって表面的には見えにくいリスクを一つひとつ見つけていきます。

 

●お子様がいないご夫婦

家族構成図は、各ご家庭でまったく異なった図になります。ここではわかりやすいモデルケースを使って、リスクの説明をしていきます。

 

お子様がいらっしゃらない夫婦だけの家族です。恋人同士のように仲良しで暮らしていらっしゃいましたが、夫が急な病でこの世を去ってしまいました。

 

子どもがいない分、夫は将来に備えて蓄えを増やしてくれていました。さて、夫の相続財産は誰が相続することになるでしょうか。また、相続人が複数いる場合、どのような割合で分けることになるのでしょうか。

兄弟姉妹のもつ相続権は「甥姪」に代襲相続される

〈ケース1〉夫の甥姪がいる場合

お子様がいらっしゃらないご夫婦は、図表1の通り、親がいれば、親に3分の1、配偶者3分の2。親がいない場合は兄弟姉妹に4分の1、配偶者4分の3の割合で分けることになります。

 

ケース1(図表1)の場合、夫は四人兄弟の末っ子だったので、ご両親も兄弟も他界されていました。でも、兄弟姉妹のもつ相続権は代襲相続されますので、甥姪たちの印鑑をもらわないと、財産の一切に手をつけることができません。

 

【図表1 家族構成図(ケース1:夫の甥姪がいる場合)】

 

夫の甥や姪とは、50年前に親戚の葬儀で顔を合わせたことがあるくらいで、付き合いがありません。名前や住所などもよくわかりませんが、随分前に、一人は海外に勤務していると聞いたことがあります。妻は、相続人を探し出すことから始め、海外在住の子は大使館を通して手続きの必要も出てきます。すべてのことを、10カ月以内に終えて申告しないと、配偶者の特権である、全財産の2分の1か、1億6000万円までは非課税になる配偶者の税額軽減特例は、基本、使えなくなってしまうのです。

 

80歳を越えようとしている妻に、一体どこまでできるでしょうか。

 

このようなリスクを、事前対策により防ぐ方法はあります。ただ、夫がご存命中にやらなければならないので、知っているか、知らないかで、奥様の未来が大きく変わってしまいます。

本連載は、2016年8月27日刊行の書籍『開業医の相続対策は「奥様」がやりましょう』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

芹澤 貴美子

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医は、今、目の前にいる患者さんの命と健康を預かる、専門的な職業です。新しい医療技術のこと、新薬のことなど、たくさんの情報を常に仕入れていなくては務まりません。なかなかお金の知識を得るための時間はないのが現実…

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