(※写真はイメージです/PIXTA)

タワマン・ブームはいまや人口20万~30万人程度の地方都市へも広がっている。そのようなエリアにどこまで需要があるのかは疑問だが、実際には億超え住戸も含め「即完売」となっている物件もあるという。都心のような華やかな眺望も期待できないタワマンを、一体どのような人たちが求めているのか。そして、タワマンと地方文化との親和性はあるのか。実態に迫る。

地方都市で突如はじまった「タワマン・ブーム」

地方都市でのタワーマンション(以下、タワマン)新築が止まらない。タワマンは煌びやかな眺望がひらける大都市だけのものかと思っていたが、福岡県、愛知県、北海道、宮城県といった人口20~30万人程度の中核都市においても建設ラッシュとなっている。

 

その要因となっているのが、老朽化した駅舎や駅前道路の整備を伴う「再開発事業」だ。新築される駅舎(駅ビル)には商業店舗や行政窓口、教育・医療施設のほか、上層階には居住フロアが設けられるのが一般的だ。駅前再開発に伴うタワマン建築であれば自治体からの交付金も受けやすくなる。そこに目を付けた大手マンション・ディベロッパーが地道に地方行脚しているのだ。

地方都市におけるタワマン事例

では、具体的にどのような地域で再開発融合型タワマン企画が動いているのか、現在進行しているプロジェクトを紹介する。

 

JR福井駅西口プロジェクト

 

施工地区面積:約1.3ha

延床面積: 約51,000㎡

主要施設:住宅・ホテル・オフィス・駐車場

竣工予定:2024年夏

 

JR岐阜駅北口プロジェクト

 

施工地区面積:約1.2ha

延床面積:約84,000㎡(住宅戸数450戸)

主要施設:住宅・商業施設

竣工予定:2028年度

 

JR岡山駅東口プロジェクト

 

施工地区面積:約1.4ha

延床面積:約84,000㎡

主要施設:住宅・ホテル・店舗・駐車場

竣工予定:2026年度

 

東京・大阪といった大都市圏においても駅前再開発事業への自治体助成は見込めるものの、駅周辺には建物が林立し、地権者も星の数ほど存在する。その一人ひとりに時間と労力をかけてお伺いを立て続けるよりも、駅前にもかかわらず広大な遊休地が広がる地方都市へシフトした方が賢明といえる。大手ディベロッパーの食指が地方へ伸びていく理由は明確だ。

地方タワマンの需要者は誰なのか

最上階住戸では3億円を超えるという地方都市のタワマンを誰が買っているのか、気になるところだ。

 

地元不動産仲介業者の話によると、最上階の特殊住戸を購入するのは地元の有力者だという。特殊住戸とは、他の住戸と比べて専有面積が広く間取りも斬新な文字通り「特別な住戸」のことだ。眺望は良好、設備のグレードも高く、しかも一棟に1、2住戸しか造られないため希少価値がある。おのずと高値でも売れてしまうわけだ。

 

中層階の一般住戸を購入するのは、東京・大阪などの大都市と地方都市の2拠点居住を目論む富裕層だ。地方都市とはいえ、新幹線停車駅に直結するタワマンであればドア・ツー・ドア感覚で快適に暮らせるだろう。

 

低層階は、近隣の戸建住宅から転居を希望する高齢者世帯が購入する。防犯性や商業利便性の高さはもちろんのこと、戸建生活にはつきものの庭の手入れ、濃厚すぎる近所付き合い、曜日・時間帯のルールが厳しいゴミ出しなどといった煩わずらわしさから解放されたいとの思いから購入を決めているという。

住民立ち退き、商店街衰退を招く事例も

タワマンの多くは再開発事業に絡めて建設されるため、主要駅前などのいわゆる「好立地」に建つことになる。地方都市の駅前にタワマンが建てば、その周囲にある商業地の土地価値は急激に上昇し、駅前エリアとその他のエリアとの「土地ヒエラルキー」が明確になってくる。

 

タワマンにおける階層ごとのヒエラルキー問題(19階までは庶民で20階以上が富裕層などという住民同士の暗黙ルール)ばかりでなく、土地評価においてもヒエラルキーは形成される。これは路線価の推移を見れば一目瞭然だ。

 

路線価は、交通量が多い主要幹線道路の価格が高く、生活幹線道路は低くなるのが一般的だが、地方都市においては双方の差があまりない。そこにさまざまなインフラを携えたタワマンが建つと、タワマン周囲の路線価は劇的に高騰し、その近隣で戸建生活を送っていた世帯の固定資産税も上がってしまう。例年の数倍に膨れ上がった固定資産税が支払えないとなれば、古くからの住民は立ち退かざるを得ない。

 

タワマンの影響はそれだけではない。個人商店街はタワマン内にできた新たなショッピングモールに顧客を奪われ、いずれ「シャッター通り」になってしまう。

 

タワマン建設によって終の棲家を奪われた住宅街や消滅した商店街の事例は後を絶たない。そのためタワマンは地元住民から毛嫌いされ、建設反対運動に発展するケースも少なくない。地方都市でタワマンが歓迎されるためにはさまざまな課題の解決が必要だ。

3億円超の物件完売、路線価急騰の弊害

タワマンは大都市のみならず、地方都市においても建設ラッシュとなっている。その多くが駅前インフラ整備等を伴う再開発事業に絡められたものだ。タワマン未開の地へ多くのマンション・ディベロッパーが奔走し、福井・岐阜・岡山などの地方都市において新規事業が進んでいる。

 

購入者層は地元有力者や、都心2拠点生活富裕層、戸建からの転居高齢世帯などで、3億円を超える高額住戸も含め完売している。しかしタワマン誕生で路線価が急激に上昇し、古くからの住民や商店が固定資産税の支払いが困難になるなど弊害も出ている。

 

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