(※写真はイメージです/PIXTA)

借地権タワマンは庶民でも手が届く破格値で売り出されることが多い。しかしその裏には新法借地権にまつわる「泥沼」があることをご存知だろうか。虎の子の資産を水の泡にしないためには、借地権付き不動産の恐ろしさを知っておくべきである。多くの人が格安タワマンの泥沼にはまっていくカラクリを時系列で追っていく。

相場より3,000万円以上安い?…「激安タワマン」の正体

タワーマンションはまさに「高嶺の花」だ。一般マンション相場の2~3割ほど高値で売り出され、即日完売となるケースも少なくない。

 

しかしそんななか、新築だというのに激安価格で売り出されるタワマンがある。よくよく調べると、これらは土地所有権のない「借地権付きタワーマンション(以下、借地権タワマン)」だということがわかった。要は他人所有の敷地上に建っている半ば賃貸のような物件である。こういった物件が意外にもDINKSや若いファミリー層に人気だという。その理由は言わずもがな圧倒的な安さだ。

 

ここで、都心主要区に建つ借地権タワマンと、その近隣に建つ土地所有権付き(以下、所有権)マンション相場を比較してみよう。

 

<新宿区>

 

神楽坂の借地権タワマン(築20年):坪単価420万円

神楽坂駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価470万円

 

<中央区>

 

銀座の借地権タワマン(築20年):坪単価460万円

銀座駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価580万円

 

<品川区>

 

大崎の借地権タワマン(築16年):坪単価350万円

大崎駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価540万円

 

<港区>

 

港南の借地権タワマン(築15年):坪単価320万円

品川駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価400万円

 

<千代田区>

 

神田東松下町の借地権タワマン(築5年):坪単価480万円

岩本町駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価500万円

 

<渋谷区>

 

宇田川町の借地権タワマン(築3年):坪単価810万円

渋谷駅周辺の所有権マンション相場(築年同等):坪単価750万円

 

※上記データは東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の売買成約データを基に平均坪単価を算出したもの。

 

これらの坪単価データをもとに専有面積20坪(約66m2)の住戸総額で換算すると、

 

中央区・築20年の借地権タワマンは、近隣の同年代所有権マンションより2,400万円(借地:9,200万円-所有権:1億1,600万円)安く、品川区・築16年物件は、3,800万円(借地:7,000万円-所有権:1億800万円)も安い。

 

逆に築浅の渋谷区物件は、1,200万円(借地:1億6,200万円-所有権:1億5,000万円)高くなる。

 

すなわち、新築で売り出す際は割高だが、15~16年経てば、所有権マンションより2~3割安く購入できるということだ。しかしなぜ築15年以降に価格が下がるのか。

大規模修繕工事で巨額損失

当然のことながら、借地権タワマンの場合は管理費・修繕積立金のほかに地代(土地賃借料)がかかる。これが土地の固定資産税より安ければ問題はなく、むしろ借地権マンションの方が「お得」である。

 

問題は定期的に行うべき大規模修繕工事だ。国土交通省のマンション長期修繕ガイドラインでは、長期修繕計画の期間を「30年以上で大規模修繕工事が2回以上含まれる期間」としている。そのため、多くのマンション管理組合は15年前後の間隔で大規模修繕計画を立てている。

 

それだけ長いスパンがあるなら生活に影響はないと考えがちだが、タワマンの大規模修繕工事期間は1~2年と長期にわたり、総工費も10億円前後と高額になる。これは管理組合の修繕積立金で賄うことになる。

 

国土交通省によると、一般的な大規模マンションの修繕積立金は1m2あたり255円程度なのに対し、タワマンは338円だという。

 

70m住戸で換算すると、

 

毎月約6,000円(一般大規模:1万7,850円−タワマン:2万3,660円)

 

も余計に払っている計算だ。それでも現行の積立額では予算不足となるケースもあり、管理組合で修繕積立金増額が提案されるものの、反対する組合員がいれば長期修繕計画は頓挫し、その間にも建物はどんどん腐朽していく。

「更地返還」で資産が水の泡に

借地権には、昭和から続く「旧法借地権」と、1992年(平成4年)以降に施行された「新法借地権」がある。多くの借地権タワマンは平成4年以降に建っているので新法が採用されることになる。戦後まもなく制定された旧法は借りる側を擁護する内容だったため、「時代にそぐわない」という地主の声を受けて法改正された経緯がある。

 

そのため新法は貸す側(地主)に寄り添った内容になっているのだが、これが借地権タワマンオーナーに重くのしかかってくる。

 

新法借地権には「普通借地権」と「定期借地権」がある。以下はその概要だ。

 

【普通借地権】

 

契約期間:30年以上

契約更新:可能(ただし、更新する毎に契約年数が短くなっていく)

 

【定期借地権】

 

契約期間:50年以上(一般定期借地権の場合)

契約更新:不可

 

借地権タワマンで一般定期借地権(契約期間50年)を条件に購入した場合、土地の賃貸借契約が終了する50年後には建物を取り壊し、更地にして地主に返還しなければならない。

 

大規模マンションの解体費用は建設費用の2~4割といわれるので、仮に建設費100億円と想定すると解体費は20~40億円になるが、これもまた修繕積立金から捻出することになる。

 

複数回にわたる大規模修繕工事に巨額投資したにも関わらず、それを解体する費用まで準備しなければならないとはなんと理不尽なことだろう。

 

「早く手放さないとどんどん資産が吸い取られていく。次の大規模修繕までに、安値でもいいから売ってしまおう…」

 

このようなオーナー心理から、築15年を経過した借地権タワマンは破格値で売り出されることになるのだ。

格安タワマン「泥沼の背景」

新築時は高額な借地権タワマンも、築15年以降は所有権マンションより2~3割安く購入できるため若い人を中心に人気がある。

 

しかし築15年以降は大規模修繕工事が始まるので、修繕積立金が増額される可能性がある。しかも一般定期借地権を条件に購入した場合、築50年時には資産放棄しなければならない。このような泥沼の背景があるため、借地権タワマンは破格値で売買されるのだ。

 

 

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