第三者からの情報取得手続を新設
また、法改正によって新たな手続きである「第三者からの情報取得手続」(民事執行法第204条~第211条)も設定されました。第三者からの情報取得手続は、債務者の財産に関する情報を第三者から提供してもらえる制度です。
この手続きは、改正後も引き続き非協力的な態度をとる債務者がいても、第三者からの情報提供で強制執行が円滑に進む効果が期待できます。
主な債務者の財産情報の入手先は次の通りです。
・土地・建物:法務局(登記所)から入手可能
・預貯金:金融機関(銀行)から入手可能
・株式・国債・投資信託:証券会社等から入手可能
・勤務先情報:市区町村役場、日本年金機構等から入手可能
給与差し押さえのために「債務者の勤務先の情報を聴取する」?
債務者の給与も差し押さえの対象です。そのために、債務者の勤務先はどこなのかを把握する必要があります。ここでは、財産開示手続と第三者からの情報取得手続で、情報の把握が可能かについて解説します。
財産開示手続の場合
債権者は原則として、債務者の現在の住所地を管轄する地方裁判所に申立て、地方裁判所は債務者を呼び出します。申立人は裁判所の許可を得て、債務者へ財産についての質問が可能です。
債務者の所有する土地や建物の不動産資産、預貯金や株券等の金融資産の有無・所在、更に勤務先の情報開示も可能です。この情報を把握できれば、仮に預貯金のような回収しやすい資産がなくても、給与の差し押さえができます。
第三者からの情報取得手続
第三者から開示してもらうことも可能な開示情報は、債務者に給与や報酬または賞与を支払う者の名称・住所です。
ただし、勤務先情報はプライバシー性が高く、取得できる人は次の請求権を有するケースに限定されています。
・養育費・婚姻費用等の支払請求権
・生命・身体の侵害による損害賠償請求権
支払いが滞ることで子供の養育費等が払えなくなる場合、または生命・身体へ重大な侵害を受けたことで賠償を受ける場合、というように情報開示の重大性の高いケースがあげられます。情報の入手先は市区町村役場、日本年金機構・厚生年金を扱う団体となります。
法改正後の「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」の要件とは?
法改正後であっても財産開示手続の要件は変わらず次の2点となります。
・強制執行、担保権の実行による配当等の手続きをしたものの、一部の弁済しか得られなかった。
・把握していた債務者の財産へ強制執行をしても、一部の弁済しか得られない疎明があった。
なお疎明とは、債権回収するのがどうやら難しいようだ、と裁判所が推測できる債権者の言い分を指します。
一方、第三者からの情報取得手続は、やや厳格な要件となっています。
・申立人が「執行力のある債務名義の正本(確定判決・和解調書・強制執行認諾文言付き公正証書いずれか)」を有する金銭債権の債権者である
・過去6ヵ月以内に強制執行の手続きをしたものの完全な弁済は得られなかった
・現在判明している債務者の財産だけでは完全な弁済を得られない
・(不動産情報・勤務先情報のみ)3年以内に財産開示手続が実施された