(写真はイメージです/PIXTA)

23年4-6月の新設住宅着工戸数は前年同期比4.7%減、首都圏のマンション新規発売戸数は同18.8%減、中古マンション新規発売戸数は同1.9%減と、いずれも減少しましたが、価格は上昇を続けています。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、住宅市場と、オフィスや物流施設などを含む不動産サブセクターの最新動向について解説します。

1. 経済動向と住宅市場

日本経済は、コロナ禍で低迷していた経済社会活動の正常化に伴い回復の動きが続いている。8/15に公表予定の2023年4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(前期比年率+3.1%)と3四半期連続のプラス成長となったと推計される1

 

輸出が財、サービスともに高い伸びとなり、外需が成長率を押し上げるほか、高水準の企業収益を背景に設備投資も2期連続でプラスに寄与する見込みである。
 

経済産業省によると、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比+1.3%と3四半期ぶりの増産となった(図表-1)。業種別では、供給制約緩和により自動車が高い伸び(前期比+5.9%)となったほか、鉄鋼(+1.9%)、非金属(+2.1%)、電子部品・デバイス(+2.8%)も堅調な動きとなった。
 

ニッセイ基礎研究所は、6月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2023年度+1.0%、2024年度+1.6%を予想する(図表-2)2。2023年後半は、米国経済の景気後退に伴う輸出の減少などから減速するものの、海外経済の持ち直しが見込まれる2024年以降は輸出の回復を主因として成長率が高まる見通しである。

 

 

住宅市場では、住宅価格が上昇するなか、2023年6月の新設住宅着工戸数は71,015戸(前年同月比▲4.8%)、4-6月累計では約20.8万戸(前年同期比▲4.7%)となった(図表-3)。内訳をみると、新築分譲マンションの着工は増加したが、それ以外(持家、貸家、分譲一戸建住宅)は減少した。

 

 

2023年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は1,906戸(前月同月比▲0.4%)、4-6月累計では5,532戸(前年同期比▲18.8%)と減少が続いている(図表-4)。

 

m2単価は104.1万円(前年同月比+1.6%)、販売在庫は4,951戸(前年比▲121戸)となった。供給量が少ないことから売れ行きは良好で初月契約率は67.8%(前年同月比+0.2%)と高い水準を維持している。また2023年上期の東京23区の平均価格は1億2,962万円(前年同期比+60.2%)と1973年の調査開始以来、初めて1億円を超えた。

 

 

東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2023年6月の首都圏の中古マンション成約件数は3,111件(前年同月比+3.6%)、4-6月累計では8,802件(前年同期比▲1.9%)となり、8四半期連続で減少した(図表-5)。中古マンション市場では取引価格が上昇し成約件数が減少するなか、在庫戸数は2022年6月以降13カ月連続で前月対比増加している。

 

 

また、日本不動産研究所によると、2023年5月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比▲0.2%、過去1年間の上昇率は+4.6%となった(図表-6)。

 

1 斎藤太郎『2023年4-6月期の実質GDP~前期比0.8%(年率3.1%)を予測~』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年7月31日)
2 斎藤太郎『2023・2024年度経済見通し-23年1-3月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年6月8日)

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月9日に公開したレポートを転載したものです。

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