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親族や他人から財産をもらった人には贈与税が課税されます。贈与税は自動的に請求されるものではなく、自分で税務署に申告して納税します。なかには「税務署に申告しないで、贈与税を払わないでおこう」と思う人がいるかもしれませんが、贈与税の申告漏れはいつか必ずばれてしまいます。みていきましょう。

110万円を超える贈与を受けた人は贈与税の申告が必要

財産をもらった人は、次のように贈与税を申告して納税しなければなりません。

 

●毎年1月1日~12月31日の間にもらった財産の合計が110万円を超えるとき

●翌年の2月1日~3月15日の間に税務署に申告して納税する

 

親から子供へというように家族から財産をもらった場合でも課税の対象になります。ただし、生活費や教育費など扶養の範囲であれば課税されません。複数の人から財産をもらったときは、それぞれの金額が110万円以下であっても合計が110万円を超えれば課税の対象になります。

 

贈与税の申告漏れ・脱税はどうやってばれるのか?

贈与税は翌年に申告と納税をします。期間が開いてしまうことから申告を忘れたり、悪質な場合は申告しなかったりすることもあります。しかし、贈与税の申告漏れ・脱税は必ずばれてしまいます。贈与税の申告漏れ・脱税がばれるポイントをみていきましょう。

 

ポイント①不動産の贈与・購入資金の援助は登記情報でばれる

土地や建物を所有することになった場合は、権利関係を明確にするため登記を行います。

 

不動産の登記が行われれば、その内容は法務局から税務署に提供されます。また、登記のときに納める登録免許税からも登記に関する情報が把握されます。つまり、不動産の贈与は税務署に筒抜けになっていて、贈与税を申告しなければいずれ見つかってしまいます。

 

不動産を現物でもらった場合だけでなく、資金援助を受けて不動産を購入した場合でも税務署にばれてしまいます。

 

税務署は登記情報をもとに、不動産を購入した人へ「お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね」という文書を発送します。文書では次のような内容が尋ねられます。

 

●不動産を購入した人の職業、年収

●不動産の所在地、売主の住所・氏名、購入金額など

●購入資金をどのようにして調達したか(自身の預貯金、借入金、資産の売却代金、贈与を受けた資金など)

 

回答は任意ですが、回答しなければ贈与を隠していることが疑われてしまいます。回答しても内容に不審な点があれば調査が行われます。

 

登記しないことはおすすめできません

不動産を現物でもらったときに登記をしなければ税務署にはばれないかもしれません。しかし、贈与税を回避する目的で登記しないことはおすすめできません。登記をしなければ、第三者に権利を主張することができません。登記の上ではいつまでたっても贈与した人のもののままであり、後でトラブルになることも考えられます。贈与した人が死亡した場合は、相続登記をしない限り相続人全員の共有となり、権利関係が複雑になってしまいます。なお、贈与をしてから贈与税の時効(最長7年)を待って登記した場合は、登記の日に贈与があったとみなして贈与税が課税されます。贈与した日を証明するために不動産の贈与契約書を公正証書で作成したとしても認められません。

 

ポイント②現預金の贈与は相続のときにばれる

現預金をもらった場合は、それだけで税務署にばれることはありません。国民一人ひとりの預金の動きを税務署が常に把握することは現時点では困難であり、銀行を経由しない現金のやりとりの把握はさらに困難です。

 

しかし、現預金の贈与は贈与者が死亡して相続があったときにばれるケースが多く見られます。

 

贈与者の死亡届を役所に出すと、そのことは税務署に通知されます。税務署は死亡した贈与者の過去の所得や預金の流れを調査して、相続税がかかるかどうかを検討します。その過程で高額の預金の出し入れが見つかれば、相続人に確認することがあります。お金の使いみちが贈与にあたるのであれば、過去にさかのぼって贈与税が課税されます。

 

ポイント③支払調書で贈与が筒抜けに

事業者から税務署に提出される支払調書でも贈与がばれることがあります。支払調書で贈与がばれるケースとしては、次のような事例が考えられます。

 

◆保険金をもらったとき

生命保険などの保険金をもらったとき、保険会社は税務署に支払調書を提出して保険金の内容を報告しています。保険会社が支払調書を提出する基準は次のとおりです。

 

●死亡保険金、満期保険金、解約返戻金等:1回あたり100万円を超えるとき

●年金給付金:年間20万円を超えるとき(契約者と受取人が異なる場合は全件)

●死亡による契約者の変更があったとき(解約返戻金が100万円以下の場合も含む)

 

死亡保険金は相続税の対象になることがほとんどですが、被保険者と契約者(保険料を払った人)と受取人の三者がそれぞれ異なる場合は贈与税の対象になります。その他の保険金でも、保険料を払った人と保険金をもらった人が異なる場合は贈与税の対象になります。

 

支払調書には被保険者と契約者と受取人が全て記載されるため、税務署に提出された時点で贈与税の対象になる保険金の受け取りはばれてしまいます。

 

◆金・プラチナを換金したとき

貴金属をもらった場合、それだけで税務署にばれることはありません。しかし、業者を通じて売却した場合は税務署にばれてしまいます。

 

金・プラチナの地金やコインの売却について、1回の取引金額(手数料控除前)が200万円を超えた場合、貴金属業者は税務署に支払調書を提出します。業者を通じて多額の金・プラチナを売却した場合は、貴金属の現物や購入資金の出どころを疑われる可能性があります。

 

◆海外に送金してもらったとき

財産をもらう人が海外にいる場合は贈与税の対象にならないと考えている人もいるようです。しかし、原則として財産をあげる人が国内にいれば、財産をもらう人はどこにいても贈与税の課税対象になります。1回あたり100万円を超える資金を海外に送金する場合は、金融機関から税務署に国外送金等調書が提出されます。つまり、100万円を超える海外送金は税務署にすぐにばれてしまいます。

 

なお、留学費用や生活費の仕送りであれば贈与税の対象にはならないので、税務署から問い合わせがあった場合は事情を説明すればよいでしょう。

 

ポイント④オークションで高額商品を落札してもばれる

税務当局は近年、ネットオークションの調査にも力を入れています。主に、オークションに出品して利益を得た人について申告漏れや脱税がないかを調査しますが、商品を落札した人も調査の対象になることがあります。

 

ネットオークションでは高額の商品が出品されることもあります。高額商品を落札した人がいれば、税務署は落札者がその代金をどうやって調達したかを調べます。ネットオークションは匿名で行われることが多いですが、オークションを運営している会社に依頼して落札者の身元に関する情報提供を受けることもあります。

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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