(※写真はイメージです/PIXTA)

一般的な分譲マンションの場合、築10~15年程度で大規模修繕工事が入るが、費用が足りなければ、当然「修繕積立金増額」の話が持ち上がる。タワーマンションも同様だが、投資目的の所有者やローン破綻寸前の居住者は非協力的で、これを機会に売却に走ろうとするケースが多い。大規模修繕を前に、だれかが「ババを引く」ことになるのだろうか。実情を探る。

ファンドバブルで一気に加速したタワマン建設だが…

2000年台初頭はタワーマンション(以下、タワマン)の黎明期といっても過言ではない。アイドルグループのSMAPをCM起用して話題となった「芝浦アイランド」や、ヒルズ族の由来となった「六本木ヒルズレジデンス」が誕生したのもこの時期だ。

 

一気に加速したタワマン建設の背景には、2006年頃から始まった「ファンドバブル」(企業の経営破綻などによって安く放出された土地を投資会社が買収し、新たに収益物件を建てて高く賃貸・売買することで再びその土地の評価が上がる現象)があり、都心部はもちろん、地方都市の繁華街にも国内外の不動産投資ファンドを事業主とするオフィスビルやタワマンといった大型不動産が続々と立ち上がった。

 

しかし、このファンドバブルは米国・サブプライムローン(リーマン・ブラザーズ・ホールディングス)の破綻、いわゆる「リーマンショック」の影響により、わずか数年で終止符が打たれることとなる。

 

しかし、リーマンショックによって日本の不動産価格は大きく下落したものの、タワマン人気は衰えなかった。価格下落を逆手に取り、退職金を持て余した熟年富裕層が都心に建つタワマンを買い始めたのだ。

 

「都心回帰」と称して夫婦で余生を過ごす、または将来の相続税対策として賃貸運用をはじめるなど、用途・目的はさまざまだ。

 

さらに、オリンピック誘致が決定した2013年以降は、タワマン人気にさらなる拍車がかかる。次に現れたのは日本不動産の「爆買い」を目的とした海外投資家たちだ。彼らは「渋谷」「新宿」「六本木」といったネームバリューだけで貪欲に購入していく。

新築時にはまったく予想がつかない、タワマンの「劣化状況」

ファンドバブルから10年余り経過したいま、投資会社の求めによって後先考えず建てられた大型不動産の維持・管理に問題が生じている。とくに居住用建物としての歴史が浅く、大規模修繕の前例が少ないタワマンはその傾向が顕著だ。

 

タワマンに限らず、築10年を経過した大型不動産は大規模修繕の必要性が生じる。大規模修繕はマンション管理会社が事前に作成した長期修繕計画をもとに進められるのだが、いかんせん「事前」に作られたものなので、現況の劣化状況にそぐわない場合もある。前述の通り、タワマンは一般のマンションより大規模修繕の情報が少なく、新築段階の長期修繕計画は概ねの推測値で作成された部分があることも否定できない。

 

外壁修繕を例にとれば、一般的なマンションでは地上から組んだ足場を使って作業しますが、タワマンの場合は屋上からワイヤーでぶら下げるゴンドラや、壁面にレールを設置する移動昇降式足場を使うことになります。

 

しかし、ゴンドラや移動昇降式足場では作業員の移動範囲が制限されることや、強風など天候悪化によって高所作業が中断されることもあり、正確な工事日程が読めない。加えて、建物中央に階段・エレベーター室をまとめたコア型や、建物中央に吹き抜けを設けたボイド型、住戸を星形に配置したトライスター型など、建物形状によっても工事進捗が大きく変わってくる。

 

最も心配なのは、高層建物の生命線であるエレベーターの劣化状況だ。これも推測が難しく、どの程度の修繕が必要かはまさに「箱」を開けてみないとわからない。もし致命的な破損等が見つかれば、当然のことながら修繕計画は大幅変更になり、ひいては修繕積立金の増額も避けられないのだ。

投資家だらけのタワマンに見える「廃墟」の未来図

不動産は「一生に一度の買物」というが、タワマンはその定説から外れている。タワマン所有者の多くは賃貸運用や転売などビジネス目的の人たちで、所有者自身がそこに長く住むことは稀だ。

 

そのため、将来の大規模修繕計画にあまり興味を示さず、管理組合の取り組みにも非協力的なケースが多いといえる。最悪なのは、毎月の管理費・修繕積立金を当たり前のように滞納し続ける外国人所有者だ。国が違えば文化も不動産のルールもさまざまだろうが、郷に入れば郷に従ってほしいものだ。しかし、このような所有者ばかりではいずれ「廃墟」になってしまう。だが、そのような状況にあってもなお、タワマン・ライフに憧れる人たちがいるのはなんとも不思議だ。

それでもなお、タワマン人気は衰えない不可思議

2000年台に盛り上がったファンドバブルとともに建設ラッシュとなったタワマン。その後のサブプライムローンの破綻(リーマンショック)によって、日本経済は斜陽の時代を迎えることになったが、それでもなお、タワマン人気は衰えない。

 

熟年富裕層や外国人投資家のニーズを掴んで活況を呈すタワマン市場だが、過去に事例が少ないタワマンの大規模修繕工事は困難を極める。修繕積立金の増額となれば、投資家や外国人を中心に手放す所有者も出てくることが予想される。憧れのタワマン・ライフには「廃墟」の未来像も見え隠れしている。

 

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