インド<金融市場動向>
⇒株式は底堅い動き、金利はもみ合い、ルピー下落リスクに留意。
【株式市場】
◆海外投資家は5ヵ月連続で買い越し
インド株式市場は、6月のCPIが事前の市場予想を上回ったものの、5月の鉱工業生産指数が堅調だったことや、海外投資家からの資金流入などが下支え要因となった。23年4-6月期業績は、ソフトウェアは予想を下回る一方、素材関連では好決算も見られた。海外投資家は5ヵ月連続で買い越し。グローバル経済の減速が予想されるなか、インドは安定的な経済成長が期待できることや、地政学リスクが限定的であることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。
【債券(国債)市場】
◆債券利回りはもみ合い
これまで実施された利上げによる今後のインフレ見通しや景気実態に対する効果や影響を見極める動きが続くが、2024年に向けての利下げの可能性も視野に入っていくことで、インド国債利回りはもみ合いながら緩やかに低下余地を探る展開を想定する。
【為替市場】
◆ルピー下落リスクに留意
目先、米国の金融引き締め観測で米ドルが堅調に推移しやすい環境を想定すれば、短期的にはルピーの下落リスクに留意したい。一方、YCC修正が小幅にとどまったこともあり、日銀は当面追加的な金融引き締めを行わないという見方が出ており、円高リスクは後退している。短期的にはルピーは円に対して上昇余地がありそうだ。
インド<マクロ経済動向・政策>
⇒景気は持ち直し。
◆生産が上振れ
5月の鉱工業生産は前年同月比+5.2%と、市場予想の同+5.0%を上回り、4月の同+4.5%から加速した。中でも資本財生産は同+8.2%と、生産全体を上回った。弊社で季節調整を行い、指数化すると、資本財生産が明確に上振れている。拡張型の財政政策が実施されていることで、2023/24年度の資本財生産・投資は上振れしている。
◆インフレ率は更に鈍化
6月の消費者物価上昇率は前年同月比+4.8%と、前月から更に鈍化し、4ヵ月連続でインフレ目標レンジ内に収まった。食料品以外の広範囲の品目でインフレが鈍化した。インドはモンスーン(6~9月)の季節に入っており、この時期の降雨量は農産物の豊作・不作を通じて期待インフレ率を変化させやすい。7月31日、気象庁はモンスーン後半(8~9月)の降雨量は長期平均に対して例年並みにとどまるとの見通しを示した。悪天候のみならず害虫被害によって足元では、トマト価格が急上昇しており、7月の消費者物価上昇率はターゲットレンジ上限の6%を超える可能性がある。しかし、玉ねぎなど他の野菜価格が総じて落ち着いているため、家計の期待インフレ率の上振れリスクは限定的となり、金融政策スタンスは変わらないだろう。
◆拡張型の財政政策
政府は2023/24年度の予算案において資本支出(公共投資)の伸び率を+37.4%と、前年度の+22.8%から加速する形で設定した。拡張型の財政政策が機能することで、2023/24年度には資本財生産・投資は上振れすると判断する。一方、2023/24年度の補助金予算は歳出全体の8.3%を占めており、昨年度の着地予想に対して28.2%の減少となっている。2024年前半に総選挙が行われる可能性が高いことを考慮すると、貧困層の有権者からの支持を固めるために、補助金支出が財政赤字の拡大をもたらす可能性がある。