先代、あるいは後継者を捨てる
先代が親族であることの問題
日本の中小企業のほとんどが、親族間の継承です。それは、借入をする際の連帯保証人制度や、株式譲渡の際の相続税など、日本独特の慣行や制度があるためです。
そこでは、先代による経営介入などは、やっかいな問題の最たるものでしょう。親族であるがゆえに、なかなか毅然とした態度で先代の介入をシャットアウトできない社長も多いのではないでしょうか。しかし、現社長が信念をもってやろうとすることならば、貫くべきです。その際には、先代に引導を渡すことも覚悟するべきです。
後継者が親族であることの問題
また、親族を後継者にした場合の、適性の不適格や能力不足も、大きな問題です。経営者にしてみれば、資質も能力も申し分ない人物に経営を引き継ぎたいのはやまやまでしょう。しかし、自分の子供や婿、甥や姪が、そういった人物である保証はありません。それでも、現在の日本の慣行や制度では、親族を後継者にせざるを得ないと考え、なかば無理やりに後継指名することも多いのでしょう。
どんな小さな会社であろうとも、資質と能力のない経営者では、会社は潰れます。そのことをわかっていながら、身内に対する甘さから、後継者を切ることができず、ずるずると問題を長引かせてしまうケースがなんと多いことでしょう。
ここで一番迷惑するのは、社員です。親族だというだけで継いだ後継者が無能だったために会社が潰れた、なんてことになれば、全社員を路頭に迷わすことになります。不適格な後継者は、切る覚悟が必要です。それが結局は、その後継者本人のためでもあります。
3社の事例
社長の信念が先代を退かせた
M社は、石材店です。現在の社長は三代目にあたり、父親である先代が会長として残っていました。この会社で、全社を挙げて整理・整頓の活動をはじめたのですが、そこに会長の介入という問題が発生しました。
「大切な石材を捨てるとは、何事だ!」というわけです。会長の頭には、石材を捨てる、という概念はありません。会長に同調して、活動をサボタージュする社員まで出てきてしまいました。
あるとき、会長が社長を呼びつけて、「今すぐ、あの活動をやめろ!」と迫ります。しかし、社長には信念がありました。整理・整頓の活動は、必ず会社を良くする、という。そこで会長に、「自分が社長になってから取り組んだ活動で、会社が悪くなったことがあるか?」と聞きました。実際に、それはないのです。会長にもそれがわかっているので、反論のしようがありません。会長が偉かったのは、それ以降、いっさいの介入をしなくなった、ということです。
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