懲役3年、罰金1,000万円、追徴金6,257万円の実刑判決も…「知的財産権の侵害」が招く大惨事【弁護士が解説】

懲役3年、罰金1,000万円、追徴金6,257万円の実刑判決も…「知的財産権の侵害」が招く大惨事【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

知的財産権には、著作権や特許権、商標権など複数の権利が存在します。では、知的財産権を侵害された場合には、どのように対応すればよいのでしょうか? また、自社の業務にあたって知的財産権を侵害してしまわないためには、どのような予防策を講じればよいのでしょうか? 今回は、知的財産権の侵害を予防する方法や侵害行為の被害に遭った場合の対処法などについて、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

知的財産権が侵害された場合の対処法

万が一自身や自社が有する知的財産権が侵害された場合には、どのように対処すればよいのでしょうか?

 

主な対応方法は、次のとおりです。

 

◆弁護士へ相談する

知的財産権が侵害されていることに気付いたら、できるだけ早期に知的財産権にくわしい弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

 

弁護士へ相談することで、侵害されている知的財産権の態様や損害額などを踏まえ、どのような法的措置をとるのか検討することが可能となるためです。

 

そのうえで、知的財産権の侵害の証拠を押さえ、法的対応に臨みましょう。

 

◆差止請求をする

知的財産権を侵害されている場合には、相手に対して差止請求をすることができます。

 

差止請求とは、知的財産権の侵害行為をやめるよう、裁判所から相手に対して通告してもらう手続きのことです。

 

差止請求には、次の3つの態様が存在します※2

※2 特許庁:特許権侵害への救済手続

 

1.侵害行為をする者に対するその行為の停止の請求

2.侵害の恐れのある行為をする者に対する侵害の予防の請求

3.侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求

 

つまり、知的財産権の侵害をやめることに加え、対象物の廃棄も請求できるということです。

 

なお、正式な差止請求をするためには、時間を要してしまうことも少なくありません。

 

しかし、知的財産権を侵害されている場合、一刻も早く侵害をやめさせる必要があるでしょう。

 

そのため、まずは簡易迅速な手続きである仮処分命令を申し立てることがよくおこなわれます。

 

通常の訴訟では結論が出るまでに1年以上を要することがある一方で、仮処分命令であれば数週間から3ヵ月程度で結論が出る場合もあるからです。

 

なお、仮処分命令の申立てをするためには、次の要件をいずれも満たす必要があります。

 

●保全すべき権利や権利関係があること

●保全の必要性があること

迅速な対応が必要なケースでは仮処分の申し立てができる可能性があるため、あらかじめ弁護士へ相談するとよいでしょう。

 

◆損害賠償請求をする

知的財産権を侵害されたことにより、損害が生じた場合には、相手に対して損害賠償請求をすることができます。

 

損害賠償請求とは、被った損害を金銭で支払うよう相手に請求することです。

 

知的財産権の侵害で認められる損害賠償請求額は侵害の態様や被った損害の額など、状況によって異なります。

 

なかでも、特許権の侵害による損害賠償請求額は高額になる傾向にあり、1億円以上の賠償が認められることも少なくありません※3

※3 知的財産高等裁判所:特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、平成26年~令和3年)

 

◆刑事告訴をする

知的財産権の侵害は、特許法や著作権法などにより、刑事罰の対象となります。

 

著作権を侵害した場合の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科です(著作権法119条、124条)。

 

また、著作権侵害行為が法人業務の一環としておこなわれた場合には、法人に対して別途、3億円以下の罰金が科されます。

 

一方、特許権を侵害した場合の刑事罰もこれと同じく、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科です。

 

また、特許権侵害行為が法人企業の業務の一環でおこなわれた場合には、法人に対して別途、3億円以下の罰金刑が科されます。

 

刑事罰には、被害者側から告訴をしなければ検察官が相手を起訴することができない「親告罪」と、告訴がなくても検察官が独自に起訴できる「非親告罪」とが存在します。

 

特許権侵害や著作権侵害など知的財産権の侵害の多くは、非親告罪とする改正がなされてきました。

 

ただし、対価を得ることを目的としない著作権侵害など一部の知的財産権侵害では、今も親告罪の形がとられています。

 

相手が知的財産権を侵害した行為に関する罪が親告罪であれば、刑事告訴が必要です。

 

また、非親告罪であっても、刑事告訴や被害届の提出を検討するとよいでしょう。

 

なぜなら、たとえばブランド品の違法コピーを転売しているなど社会的な影響が大きなものでない限り、知的財産権侵害を警察や検察が独自に捜査し起訴するケースはさほど多くないと考えられるためです。

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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