配偶者控除に生命保険料、地震保険料までも…
配偶者控除が減らされる可能性
「納税者が、一定所得金額以下の配偶者を有する場合、その納税者本人の担税力の減殺を調整する趣旨から、配偶者控除及び配偶者特別控除(所得税:いずれも最高38万円。配偶者が70歳以上の場合の配偶者控除は最高48万円、個人住民税:いずれも最高33万円。配偶者が70歳以上の場合の配偶者控除は最高38万円)が設けられています。また、配偶者特別控除は、配偶者の収入に応じて控除額が逓減・消失する仕組みとなっています。
(中略)配偶者控除又は配偶者特別控除は社会的に広く適用されている状況ですが、制度創設時と比べて、「片働き世帯」は減少する一方で、「共働き世帯」、特に「夫フルタイム・妻パートの世帯」が増加しており、世帯構成の変化を反映し、その適用者は令和3(2021)年分においては約1,339万人と、平成23(2011)年分の約1,584万人と比べて減少してきています。
今後とも、家族や働き方等を巡る様々な議論を踏まえ、公平・中立な税制を構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除のあり方についても検討する必要があります。」(傍線は本ブログの筆者による)
「公平・中立」と聞こえはいいが…生命保険料や地震保険料などが減らされる可能性
「生命保険料控除は、一般の生命保険契約や個人年金保険契約などに支払った保険料のうち一定額を所得控除の対象とするものです。
生命保険の加入率は相当の水準に達しており、また、保険にも貯蓄性、投資性の高いものが多く、その貯蓄としての機能に着目すれば、他の金融商品と同様であるとの指摘もあり、金融商品間の税負担の公平性及び中立性に照らして問題があると考えられます。
地震保険料控除は、支払った地震保険料の全額を所得控除の対象とするものです(上限5万円)。従前は、損害保険契約等に係る保険料のうち一定額を所得控除の対象とする損害保険料控除が設けられていましたが、平成18年度税制改正において、地震災害への対応に重点化することとされ、地震保険料控除に改組されました。
(中略)上記で述べた人的控除以外の「その他の控除」の控除のあり方については、経済社会の構造変化を考慮し、制度の趣旨を踏まえつつ、「公平・中立・簡素」の観点から、検討を加えることが必要です」(傍線は本ブログの筆者による)
16~18歳の扶養控除が縮小・廃止される可能性
このほかにも、「児童手当の支給期間延長」との相殺ですが、16~18歳の扶養控除が廃止・縮小される可能性があります。『異次元の少子化対策』(→もしそれを望むなら)は名ばかりに思えます。
まず、2023年度の政府税調の答申は、扶養控除について次のとおり説明をしています。
「自己と生計を一にする扶養親族を有する納税者に対して、その担税力の減殺を調整する趣旨から、扶養控除が設けられています。
扶養控除は扶養親族の年齢によって控除額が設定されており、所得税に係る16歳~18歳及び23歳~69歳の一般扶養控除については38万円(個人住民税:33万円)、19歳~22歳の特定扶養控除については63万円(同:45万円)、70歳以上の老人扶養控除については48万円(同:38万円)(同居老親等加算が適用される場合は58万円(同:45万円))となっています。
かつては15歳以下の扶養親族についても扶養控除が適用されていましたが、平成22年度税制改正において、子ども手当の創設に伴い、15歳以下の扶養控除は廃止されました」(以上のカギかっこ内は引用)
これについて、政府設置の「こども未来戦略会議」が先月中旬にまとめ、同日に閣議決定された『こども未来戦略方針』には、次の記述があります。
「児童手当については、次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援としての位置付けを明確化する。このため、所得制限を撤廃し、全員を本則給付とするとともに、支給期間について高校生年代まで延長する。
児童手当の多子加算については、こども3人以上の世帯数の割合が特に減少していることや、こども3人以上の世帯はより経済的支援の必要性が高いと考えられること等を踏まえ、第3子以降3万円とする。
これらについて、実施主体である地方自治体の事務負担も踏まえつつ、2024年度中に実施できるよう検討する。
その際、中学生までの取扱いとのバランス等を踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する」(以上のカギかっこ内は引用。傍線は本ブログの筆者による)
給与所得者への増税は不可避:大増税なら資産運用が重要
今後数年以内の増税は不可避でしょう。
その主たるターゲットは給与所得者です。
言い換えれば、「資産を形成する必要がある世代」がその足をぐいぐいと引っぱられます。
これまで以上に資産運用が重要になります。銘柄選択によって、期待リターンの高い銘柄に投資をすることも一案です。
あるいは、一貫した運用哲学の下、長きにわたってインデックスを上回るリターンを出している優秀なアクティブ・ファンドに長期投資・つみたて投資をすることもできるでしょう。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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