岸田首相は「給与所得者への増税」否定したが…
本稿執筆後に、岸田首相は、(親戚で財務省出身の)宮沢洋一・党税調会長と会い、給与所得者への増税を否定しましたが、筆者は、財務省主導の路線はまったく変わらないと考えています。
増税のメニュー(一部)は次のとおりです。
- 給与所得控除が減らされる可能性
- 退職所得控除が減らされる可能性
- 通勤手当や現物支給(社宅貸与、食事支給、従業員割引)などの非課税所得が非課税でなくなる可能性
- 配偶者控除が減らされる可能性
- 生命保険料や地震保険料などが減らされる可能性
- 16~18歳の扶養控除が縮小・廃止される可能性
国民の負担増については、このほかにも、「次元の異なる少子化対策のための『こども未来戦略方針』」や、今年度の『骨太の方針』でも示唆されています。
以下、答申の本文から、重要な部分のみを短く抽出しました。傍線部が「政府税調による提案」と読めます。いずれもマイルドに書いてありますが、今後数年以内には、これらの項目のいくつかが実施に移され、「資産を形成する必要がある給与所得者」を中心に増税になるとみられます。
給与所得控除が減らされる可能性
「給与所得は、給与収入の金額から、その収入金額に応じて算定される給与所得控除の額を差し引いて算出されます。
(中略)給与所得控除によりマクロ的には給与収入総額の3割程度が控除されていますが、給与所得者の必要経費と指摘される支出は給与収入の約3%程度と試算されており、主要国との比較においても全体的に高い水準となっているなど、「勤務費用の概算控除」としては相当手厚い仕組みとなっています」(傍線は本ブログの筆者による)
退職所得控除が減らされる可能性
「退職金は、一般に、長期間にわたる勤務の対価の後払いとしての性格とともに、退職後の生活の原資に充てられる性格を有しています。
このような退職金の性格から、一時に相当額を受給するため、他の所得に比べて累進緩和の配慮が必要と考えられることを踏まえ、退職所得については、他の所得と分離して、退職金の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1を所得金額として、累進税率により課税されます(2分の1総合課税)(個人住民税は比例税率)。
退職所得控除は、勤続年数20年までは1年につき40万円、勤続年数20年超の部分については1年につき70万円となっています。
(中略)現行の課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される退職金の支給形態を反映したものとなっていますが、近年は、支給形態や労働市場における様々な動向に応じて、税制上も対応を検討する必要が生じてきています」(傍線は本ブログの筆者による)