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離婚10年、シングルマザーに届いた銀行からの「催告書」
筆者はこれまで住宅ローン破綻に関するご相談を数百件にわたって受けていますが、そのうちの約3割は離婚が関係しています。家や住宅ローンと離婚は密接に関係していることが多く、離婚で夫婦の縁が切れても、家にまつわる関係は切れないことが珍しくないのです。
家を購入するときに、離婚を想定して購入する方はほとんどいないでしょう。しかし、離婚リスクを想定していなかったばかりに、人生が大きく狂ってしまった方も少なくありません。
典型的な例を紹介しましょう。
40代の佐藤さん(仮名)は、元夫と10年前に離婚し、その後はずっと子どもとともに実家で生活していました。
家を購入したのは結婚した直後で、佐藤さんは元夫名義の家の住宅ローンの連帯保証人になっていたのです。離婚するとき「住宅ローンは元夫がひとりで最後まで払う」という条件の公正証書を作成していたことから、離婚後、自分と子どもが去った家についてなにも考えることはなかったとのことでした。
しかし、離婚して10年が過ぎたある日、突然、銀行から封書が届きました。
「元夫が住宅ローンの返済をしなかったため、連帯保証人である佐藤さんが、代わりに一括で支払うように」
中身は催告書。文面を見た佐藤さんは、頭が真っ白になってしまったといいます。
銀行にとって「連帯保証」と「夫婦の離婚」は無関係
佐藤さんは急いで元夫に電話を入れたところ「悪いな、もう払えなくなった」といわれ、それ以上どうすることもできませんでした。
佐藤さんにはとてもではないですが、元夫の代わりに住宅ローンを支払う資力はありません。結局、元夫は自宅を任意売却することにしましたが、それでも住宅ローンを返し切ることができず、400万円以上の残債が残ってしまいました。
この残債については、元夫が払っていくことで話がつきました。しかし佐藤さんは、元夫をまったく信用できません。元夫が返済できなければ、自分がこの負債を抱えていかなければならないと思うと不安でたまらず、精神的に参ってしまいました。
そのため、佐藤さんは自己破産を選択することにしました。
連帯保証契約は、あくまでも連帯保証人と銀行との間の契約であり、銀行からしてみれば、夫婦の離婚といった個人的な事情は一切関係ありません。そのため、離婚で夫婦関係が切れたとしても、銀行との連帯保証契約は継続するのです。
また佐藤さんのように、公正証書で「元夫が払う」と取り決めても、それは夫婦当事者間の約束事に過ぎず、その公正証書で銀行に対抗することはできません。そして、仮に公正証書を交わしていたとしても、元夫がすでに収入や資力を喪失していれば、差押えできるものがなく、ほとんど効力を持たなくなってしまいます。
離婚時に「連帯保証」を外す方法はあるか
佐藤さんのようなトラブルを回避するためには、まず第一に「連帯保証をしてまで家を買わない」ことです。購入時に銀行から連帯保証を求められた場合は、家の予算を下げるか、夫婦どちらかが単独でローンを組めるようになるまで待つのも選択肢です。とはいえ、家を買うときはどうしても舞い上がってしまい、そこまで冷静に考えられないかもしれません。
では、連帯保証で住宅ローンを組んでしまった場合、離婚時に連帯保証を外すことは可能なのでしょうか?
これは、いま住宅ローンを借りている銀行に相談してもほとんどの場合は断られてしまいます。なぜなら、銀行の立場からすれば、せっかく未回収リスクを下げるために連帯保証人を取っているのに、単にそれを外すことにはデメリットしかないからです。
そのため連帯保証を外すには、いま借りている銀行ではなく、別の銀行で、連帯保証人なしで借り換えができないかを模索する必要があります。つまり、いまの住宅ローンは一旦全額返済してしまい、新たに単独でローンを組み直すという方法です。
自宅を購入した当時は、収入や勤続年数などの問題で単独で住宅ローンを組むことができなかったとしても、購入時よりも夫の年収などの条件が上がっていれば、連帯保証人なしで貸してくれる銀行が見つかるかもしれません。ただし、当時よりも年収が下がっていたり、直近で転職している場合は難しいでしょう。
連帯保証を外せないなら売却、あるいは覚悟を決める
離婚する際に借換が難しく、連帯保証を外せないのであれば、将来にリスクを持ち越さないために、その時点で売却してしまうことも選択肢として考える必要があります。
また、売却せずに連帯保証を継続するのであれば、佐藤さんのように将来自分にも請求される可能性があることを理解し、覚悟を決めて離婚をしなければなりません。
購入時にはあまり深く考えないかもしれませんが、離婚と住宅ローンは将来にわたって密接に完成する問題です。少なくても離婚をするときには感情的にならずにしっかりと話し合って検討するべきでしょう。
加藤 康介
ライフソレイユ株式会社 取締役
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