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離婚が引き金で「破産」に追い込まれたパワーカップル
静岡県に暮らす鈴木さん夫婦(仮名)は、7年前に6,000万円で注文住宅を新築しました。
この地域は、建売住宅が3,000万円台で販売されているエリアで、周辺と比較しても、明らかに「豪邸」といえる立派な自宅でした。
当時は夫婦ともに大手企業に勤務し、世帯年収も1,300万円以上。自宅の建築に不安はなかったといいます。当時を振り返った鈴木さんは、「あの頃の私は、結婚生活が壊れるなんて夢にも思っていませんでした。ローンも無理なく払える金額でしたし…」と語ります。
ところが、新築の我が家に引っ越してから、夫婦の間がギクシャクするようになりました。
子どもの教育や将来設計にズレが生じ、次第に夫婦仲が険悪となり、ついには言葉も交わさないほど冷え切り、離婚へ。妻は子どもを連れて家を出ていきました。
住宅ローンは鈴木さんが払い続けることで話がまとまりましたが、これまで2人で払っていた月15万円以上の金額を1人で背負うだけでなく、養育費の負担も重なり、鈴木さんの生活は苦しくなります。
鈴木さんは、生活負担の重さと、広い家にたった1人残された寂しさから、ついにはうつ病を患い、仕事の継続ができなくなってしまいました。最初は傷病手当などで凌いでいましたが、次第にローンの返済継続が困難となり、最終的には自宅が競売にかけられることになったのです。
ペアローンの悪夢…元夫の自己破産で元妻に及んだ悲劇
自宅が競売にかけられたことで退去を余儀なくされ、そのうえ売れた金額だけでは住宅ローンを返しきれず、鈴木さんは1,000万円以上の残債を抱えることになりました。しかし、いまの生活では返済のめどが立たず、鈴木さんはやむなく自己破産を選択しました。
その結果、離婚した元妻にも悲劇が襲います。鈴木さんと元妻は、自宅の購入時にペアローンで住宅ローンを組んでいました。ペアローンは互いに連帯保証をしている状態になるため、夫が払えなくなれば妻に支払い義務が生じます。
そのため、離婚しているにも関わらず、鈴木さんが自己破産をしたことで、元妻には競売後に残った1,000万円以上の債務が請求されることになったのです。
「家を買うときは、私も住宅ローン控除を受けらるから、ペアローンのほうがお得だと考えていました。離婚は大変でしたけど、別れてからは住宅ローンのことなんてすっかり頭から抜け落ちていましたが、まさかこんなことになるなんて…」
結局、元妻は残債の1,000万円以上を毎月分割で支払い続けています。
お得に思えるペアローン、もし片方の収入が途切れたら…
いまは結婚後も正社員として働く女性が多く、高所得同士の夫婦を指す「パワーカップル」という言葉もよく聞くようになりました。
多くのパワーカップルは、家を買うときにペアローンを利用します。ペアローンなら、1人で住宅ローンを組むより多く借入ができるため、より高額な物件を購入することができるのです。
なにより最大のメリットは、ペアローンにすることで「夫婦共に住宅ローン控除を使える」という点です。不動産会社の営業マンも、より高額な物件を購入してもらうため、この点を強調し、多少強引にでもペアローンを組ませようとします。
住宅ローン控除をダブルで使えるという点では確かにお得なのですが、ペアローンは双方の債務を連帯保証しなければならない点に注意が必要です。もし途中でどちらかが払えなくなったら、もう1人が相手の責任も負わなければなりません。
当然ですが、そのときに離婚しているかどうかはまったく関係ありません。また、ペアローンにしなくても、連帯債務や連帯保証の契約をすれば同じことになります。
その結果、鈴木さんの元妻のように「住んでもいない家の借金を返し続けなければならない」という悲劇を招くのです。
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住宅ローンは、1人が無理なく払える額を
家を買うときの予算は、世帯収入で考えるのが一般的です。夫婦2人の収入で払っていければいいと考えるわけです。
しかし、数十年に渡って払い続ける住宅ローンを、いまの世帯収入がずっと続く前提で組むのはあまりにも危険です。鈴木さん夫婦のように離婚するかもしれませんし、病気やケガでいまのように働けなくなるかもしれません。
その場合のリスクヘッジとして、住宅ローンを組む金額は「どちらか1人でも余裕を持って払える額まで」にすることを強くお勧めします。たとえば、ご主人が年収1,000万円、奥様が年収500万円の世帯であれば、将来仮に奥様の年収がゼロ、ご主人の年収が800万円程度まで下がっても払っていける程度の金額を予算とします。
どうしてもそれ以上高額な物件を購入したいのであれば、頑張って頭金を貯めてから購入し、ローンの借入額自体は上記の目安程度に抑えるべきです。
だれしもが家を買うときは「いい家に住みたい」と考え、見栄を張ってしまうものです。その結果、予算がどんどん上がっています。しかし、いまの収入や生活が20年後も続くという前提のもと、何千万円もの借金をするのがどれほどハイリスクか、しっかりと理解したほうがいいでしょう。そして、それを踏まえたうえで、予算設定をすることが重要なのです。
加藤 康介
ライフソレイユ株式会社 取締役
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