ボーナス&残業代カット、パート代半減で生活破綻
Aさんは13年前に自宅を購入し、妻と子ども2人と慎ましく暮らしていました。子どもを私立の学校に通わせていたため、決して生活は楽ではありませんでしたが、夫婦で力を合わせて仕事と子育てを頑張ってきたといいます。
しかし、そんなAさんをコロナ渦が襲います。コロナ渦の影響で、Aさんの勤務先の企業の業績が悪化。ボーナスが全額カットとなってしまったばかりか、リモートワークが進んだことで残業も原則禁止となり、残業代までカットされてしまったのです。もともとハードワークをしていたAさんは、年収の3割近くがボーナスと残業代であったため、大幅に収入が減少してしまいました。
さらに追い打ちをかけるように、結婚式場でパート勤務をしていた妻も、営業停止や挙式の減少の影響でシフトを削られてしまい、収入が半分以下になってしまいました。
出費を切り詰めてやりくりしようとしましたが、無理な状況が続き、とうとうクレジットカードのリボ払いに手を出してしまいました。しかし、今度はリボ払いの返済の負担がのしかかり、最後には、来月の住宅ローン返済も厳しいという状況にまで追い込まれ、Aさんは途方にくれました。
追い詰められたAさんは、夫婦で何度も話し合いを重ね、子どもの生活や将来だけは守ろうという想いから、家を諦めて売却し、家賃の低い賃貸に引っ越そうという結論に至りました。せっかく建てた家を手放すのは苦渋の決断でしたが、それしか方法が残っていなかったといいます。
後日、転居を終えたAさんが語ってくれました。
「家族の思い出が詰まった家を手放すのは苦しかったですし、家を守れなかった自分が情けないという気持ちに苛まれました。でも子ども2人は大学に行かせてやりたいですし、そのために今できることをやろうと妻にも言われました。家を売るときは本当に辛かったですが、今はお金の負担が減って少し気持ちが軽くなりました。家は狭くなりましたが、身の丈に合っていて今はこれで十分かなと思います。心機一転、子どもが独り立ちするまでもう一度頑張ろうと思います」
ローンが焦げ付き、家もお店も差押えられ…
Bさんは5年前に先代の父親から引き継いだ飲食店を運営していました。昔からの常連さんに支えられ、細々ではありますが、安定して経営できていたといいます。
しかし、日本で緊急事態宣言が発令されてから、パッタリと客足が途絶えます。当初は政府の支援金などで凌ぐことができたそうですが、支援金が切れて以降も、客足が以前と同じ水準まで戻ることはありませんでした。
Bさんのお店は赤字に陥り、足りない分は自己資金で補填しなければならない状況へと陥ります。その結果、収入が途絶えて生活が成り立たなくなり、自宅の住宅ローン返済も遅れがちになってしまいました。
さらには、資金繰りに窮したことで、もともとお店の運営資金として借りていた融資の返済も滞るようになってしまいます。追加融資を申し込みましたが、財務状態が悪すぎて断られてしまったそうです。
結局、住宅ローンもお店の融資も延滞が続き、家もお店も銀行に差押えられてしまいます。このままでは家もお店も競売にかけられてしまう状況に追い込まれ、Bさんはやむを得ず、任意売却して返済することを決断します。
先代から引き継いだお店だけはどうしても残したいという想いから、お店は「リースバック」と呼ばれる形式で売却することになりました。リースバックとは、不動産を売却するのと同時に、買い手と賃貸契約を交わして賃貸として借りることで、売った後も賃料を支払いながらそのまま使うことができるという仕組みです。これにより土地とお店の所有権は失いますが、そのままお店の運営を継続することができます。
家とお店の売却で得た資金で住宅ローンと融資をすべて完済し、競売にかけられる前に差押えを解除することができました。しかし、お店の売上を立て直さなければ、生活は苦しい状況のまま、リースバックしたお店の家賃の支払いもできなくなってしまいます。
「少しずつですが売上が戻ってきたので、いまは経費を削りつつ、早く元の水準に戻せるように懸命に働いています。先代の土地を売ることにものすごく大きな罪悪感がありしたが、ひとまずお店だけは守れたので、何とか顔向けできるように、これからも頑張っていきたいです」
と、Bさんは話してくれました。
加藤 康介
ライフソレイユ株式会社 取締役
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