(※写真はイメージです/PIXTA)

公正証書遺言とは、公証人の関与を受けて作成する遺言書です。作成には手間や費用がかかるものの、もっとも無効となりづらく確実な遺言方式であるといえます。しかし、公正証書遺言を遺しても、相続人がもめるケースはゼロではありません。そこで本記事ではAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、公正証書遺言があってももめるケースの紹介とともに、もめないための対策について解説します。

公正証書遺言でもめないためには…

せっかく作成した公正証書遺言をもめごとの原因としないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか? 主な対策は次のとおりです。

 

1.弁護士などの専門家に作成サポートを依頼する

公正証書遺言は、弁護士などの専門家を介さずに直接公証役場へ行って作成することが可能です。しかし、公証役場は原則としてすでに決まった内容を公正証書とする場所であり、公正証書遺言の内容を一から相談する場所ではありません。
 

そのため、弁護士を介さない場合には、遺留分など遺言内容から生じるリスクを自分で判断し、内容を検討する必要があります。

 

しかし、将来のリスクを自分ですべて洗い出して検討することは、容易ではないでしょう。せっかく作成した公正証書遺言で家族がもめる事態を避けるため、公正証書遺言を作成する際には弁護士などの専門家へご相談ください。

 

2.遺留分に配慮する

先ほど解説したように、配偶者や子など一部の相続人には遺留分が存在します。遺留分を侵害する内容の公正証書遺言も作成できるものの、後に遺留分侵害額請求がなされてトラブルとなるかもしれません。

 

そのため、公正証書遺言を作成する際には遺留分制度についてよく理解をしたうえで、内容を検討する必要があるでしょう。そのうえで、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成するのであれば将来の遺留分侵害額請求に備え、請求額を支払う原資についてまで検討しておくことをおすすめします。

 

3.証人をよく確認する

欠格要件への該当者を誤って証人にしてしまうと、せっかく作成した公正証書遺言が無効となってしまいます。そのため、自分で証人を手配するのであれば、その証人との関係性を弁護士などの専門家へよく説明したうえで、欠格要件に該当しないことをよく確認しておくことが必要です。

 

なお、公正証書遺言の作成に関して専門家へサポートを依頼した場合には、証人も専門家側で手配してくれることが多いでしょう。そのため、欠格要件該当者を証人としてしまうリスクを最小限に抑えることが可能となります。

 

4.医師の診断書をとっておく

遺言作成当時に遺言能力がなかったなどと主張されトラブルになる事態を避けるため、少しでも不安な兆候があれば医師の診断書をとっておくとよいでしょう。

 

5.あらかじめ推定相続人と話し合う

遺言は遺言者が単独でできるものであり、遺言書を作成するにあたって推定相続人などの承諾を取り付ける必要はありません。家族が「そのような内容の遺言を作るなんて許さない」などと主張したとしても、遺言者が望む内容の遺言書を作成できるということです。

 

しかし、将来のもめごとが予見されるのであれば、遺言の内容についてあらかじめ推定相続人などと話し合っておくこともひとつの手でしょう。家族が集まった場で予定している遺言の内容を直接口頭で伝えることで、遺言者の想いが伝わり家族の納得を得やすくなります。

 

6.付言事項を活用する

公正証書遺言には本文のほかに、付言事項を記載することができます。

 

付言事項とは、その遺言に付け加える言葉です。たとえば、「これからも家族皆で仲良く暮らしてください」といった内容や、「これまでありがとう」といった内容などを、ある程度自由に書き添えることができます。付言事項には、法的な拘束力はありません。しかし、遺言を遺す理由や家族への想いなどを付言事項として記すことで、争いの抑止力となる効果が期待できます。

公正証書遺言が原因でもめるケースもあり得る

公正証書遺言は、もっとも確実で無効になるリスクの低い遺言方式です。しかし、公正証書遺言が原因でもめるケースは、ゼロではありません。たとえば、遺言能力や証人の欠格事由が問題となるケースや、遺留分を侵害して遺留分侵害額請求がなされるケースなどが挙げられます。

 

せっかく作成した公正証書遺言がもめごとの原因となる事態を防ぐため、遺言書の作成は弁護士などの専門家へご相談ください。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所

 

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