急増したリバース・レポは、突然現れたものではない
今日は、[図表1]に示すとおり、直近の残高が2兆ドルを超えるリバース・レポについて考えたいと思います。
「リバース・レポ」のしくみ
リバース・レポは、米連邦準備制度理事会(FRB)にとっての伝統的かつ日常的な資金吸収手段です。逆に、レポは、FRBにとっての伝統的かつ日常的な資金供給手段です。
たとえば、景気の過熱にともない、多くの市中銀行がこぞって融資を増やすとします。このとき、市中銀行は「貸出先の信用力」とともに、「今後の政策金利(調達)の見通し」を考慮に入れつつ、貸出金利を設定したり、貸出の可否を決定するはずです。
「融資の実行は顧客預金のクレジットとして成立」します。市中銀行は、融資によって「発行」した顧客預金の一定割合に相当する準備預金を、中央銀行が定める法定準備率にしたがって(中央銀行に)積む・預ける必要があります。
■各行が融資を増やした場合…準備預金への需要が高まり、金利が上がる
各行がこぞって融資を増やすと、準備預金への需要が高まって、準備預金を貸借する翌日物市場(無担保、有担保)では金利が上昇します。
たとえば、日本や米国では「無担保の翌日物金利」が政策金利ですから、この金利が誘導目標値を超えそうになれば、中央銀行はレポによって、市中銀行が持つ資産を担保に準備預金を供給します。
市中銀行は、(金利上昇圧力によって)他行から借りれば高くなりそうな金利を、中央銀行から(それよりも低い)政策金利近傍の水準で調達することができます。これによって、市中銀行は必要な準備預金を積むことができ、中央銀行は政策金利を誘導目標に収めることができます。
■各行が融資を減らした場合…準備預金への需要が減り、金利が下がる
逆に、各行がこぞって融資を減らすと、それは顧客の資金返済に伴って口座から預金が「消去」されることを意味しますから、所要準備額が減ることで(もともとの融資実行時に中央銀行から調達していた)準備預金が余り、準備預金を貸借する翌日物市場(無担保、有担保)では金利が低下します。
「無担保の翌日物金利」が誘導目標値を下回りそうになれば、中央銀行はリバース・レポによって、中央銀行が持つ資産を担保に市中銀行から準備預金を調達=吸収します。
市中銀行は、(金利低下圧力によって)他行に貸し付ければ低くなりそうな金利を、中央銀行に(それよりも高い)政策金利で預けることができます。これによって、中央銀行は政策金利を誘導目標に収めることができます。
また、法定準備率を満たすために所要準備預金を積むのは、2週間や1ヵ月単位の幅を持った期間における平均残高で決められていますから、各日にどのくらい積むかは各行の裁量によって決まります。
その日の翌日物金利は「今日積もうか、明日にしようか」といった各行のオペレーションによっても左右されます。たまたま「今日積みたい」と思う銀行が多ければ、当日の翌日物金利には上昇圧力が生じます。「明日積みたい」と思えば、その逆です。
準備預金に付利がなされる前の中央銀行は日々の資金需要や資金の量について様子を見ながら、資金供給量を調整し、政策金利を誘導していましたし、日々の政策金利の変動も大きめでした。