2兆ドル余りのリバース・レポは、誰から吸収しているのか?
「いまはどうか」といえば、中央銀行の量的金融緩和・QEによって巨額の準備預金が存在します。前節に従うと、翌日物金利には常に大幅な低下圧力が生じますし、FRBはリバース・レポによって資金を吸収することで、政策金利を誘導目標に収める必要があります。
ただし、この巨額の準備預金のうち、市中銀行(預金取扱機関)の準備預金については(現状は、リバース・レポ金利よりも0.1%高い水準で)付利がなされていますので、市中銀行が持つ分は市中銀行準備預金として残り、リバース・レポでは吸収されません。
主な運用主体は「MMF」や海外中銀
だとすると「この2兆ドル余りのリバース・レポは誰から吸収しているのか」という話になります。それは「顧客から預金を預からないために準備預金に付利されない主体」であるMMFや政府支援機関(GSEs)、海外中銀などの国際機関などです。
なかでも、[図表6]に示すとおり、FRBのリバース・レポへの運用残高の大部分はMMFによるものです。
家計や企業がMMFに資金を移すワケ
では、MMFはどうやって資金を得るのか。それは、家計や企業による預金の引き出しとMMFへの移し替えによってです。市中銀行にとってみると、顧客預金が減少しますが、準備預金は潤沢にあるため、準備預金の減少に任せることになります。
では、なぜ家計や企業は預金を引き出し、MMFに資金を移すのか。その主な理由は、MMFのほうが預金よりも高い金利を提供するためです。
[図表7]に示すとおり、直近の政策金利は5%を超える一方で、預金金利は2%程度です。銀行の預金金利が2%程度に留まる理由は、銀行が保有する資産の利回りが低く、預金金利を政策金利なみに引き上げてしまうと(現在のFRBのように)逆ザヤに陥ってしまうためです。
他方のMMFは短期の証券で回している器ですから、現在は5%を超える利回りを出せます。よって、家計や企業には預金を引き出し、MMFに移すインセンティブがあります。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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