(※写真はイメージです/PIXTA)

立地や眺望のよさから、いまなお高い人気を誇るタワーマンション。しかし、そこを生活拠点とする人には、知っておくべき懸念点があります。自然災害時の不安はもちろん、大規模であるがゆえに高額となる「修繕積立金」を、いつの間にか悪徳業者に使い込まれるといった深刻な問題も起こっています。実情を探ります。

タワマンのエレベーター、地震発生時に起こりうる深刻な問題

タワーマンションが抱える盲点に、エレベーターの問題があります。

 

まず、待ち時間が長いこと。朝と夕方のラッシュアワーには2~3分待つことも珍しくなく、朝の出勤時の多忙な時間帯は、とくにストレスになります。

 

そして、地震に弱いことです。タワーマンションに限らず、超高層ビルの上層階は、一般的に揺れが大きく、しかも長く揺れるという特徴があります。その際、エレベーターが停止してしまうのです。

 

2011年の東日本大震災では、首都圏ではタワーマンションに限らず、ほとんどのエレベーターが停止しましたが、実は、大阪でも1032基のエレベーターが停止しました。エレベーター停止リスクが高いのも、タワーマンションの特徴だといえます。

 

地震が収まったあと、エレベーターが簡単に復旧するといいのですが、じつは、エレベーターは自動復旧せず、保守会社の技術員が復旧作業に来ないと動かない仕組みになっています。この復旧は、早ければ数時間、長いと数日間の時間を要します。

 

これは地震が大きければ大きいほど、そして震源地に近ければ近いほど、顕著に時間がかかります。このときの高層階の人たちは、階段の上り下りをしなければなりません。これを「高層難民」といいます。

 

実は筆者も、2018年6月18日、朝7時58分にマグニチュード6.1の地震が襲った大阪府北部地震のとき、大阪梅田ビジネスホテルの17階に宿泊していました。その瞬間、ユニットバスにためていたお湯の多くが湯船からこぼれるほどの揺れを経験しました。震度6だった大阪市北区では、その瞬間からエレベーターが終日停止し、筆者も朝食の購入や、交通機関の確認、チェックアウト等のため、17階から1階までを階段で数回往復しましたが、翌日は筋肉痛で大変でした。

 

高さ31mを超える建築物には、非常用のエレベーター設備の設置が義務付けられています。タワーマンションは31mを超えるので、確実に非常用エレベーターが設置されています。非常用エレベーターは通常時、乗用及び荷物用として利用しているものになりますが、非常用エレベーターには一般のエレベーターとは異なる予備の電源があり、とくに火災時に消防隊が素早く消火活動や避難活動、救助活動ができるよう、籠の大きさや運転機能等が特別な仕様になっています。

 

この非常用エレベーターは、プログラム等含め、保守やリニューアル費用はまったく競争原理が働いておらず、非常に高額な維持管理費・更新費がかかるのです。

 

筆者の感覚では、31m以下のマンションで独立系の保守会社と比較すると、維持管理の保守費用でおよそ倍程度、そして更新費用は3~5倍となっています。

 

さらに非常用エレベーターだけでなく、一般のエレベーターにも同様の傾向がみられ、同一のプログラムで動いているエレベーターも、維持管理や更新費用をローコストで納めるのは、容易なことではありません。

「長周期地震動」+「共振現象」ですさまじい揺れに

地震対策としては、免震構造や制震工法などの建築物もありますが、一般的に、超高層ビルまたはタワーマンションには「固定周期」というものがあり、低層建物では固有周期は短く1秒以下ですが、超高層ビルなどではその高さなどにより変わり、高さ300m級のものでは6秒から7秒と、非常に長くなります。この揺れによって倒壊が防げるのですが、実は、地震による地面の揺れの周期と建物の固定周期が一致すると、建物は大きな揺れを伴うことがわかっています。

 

つまり、最近よく言われている長周期地震動によって、超高層ビルやタワーマンションは揺れが長い時間継続し、そして共振現象によって揺れが増幅されることがわかっています。マンションでは高層階ほど大きな揺れを伴うことになり、住民のなかには、強風でも横揺れするという人もいます。

 

ちなみに、2011年の東日本大震災では、震源地から770キロメートル離れた大阪の55階建てビルで、約10分間、最大2.7m揺れたという統計があります。このときの大阪の震度は震度3でしたが、天井や壁などの損傷は360カ所にのぼりました。

 

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