(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が憧れるタワーマンション。眺望も立地もよく、資産価値も下がりにくいなど、多数の魅力がありますが、富裕層の間でおこなわれていた「タワマン節税」に、いよいよ国税が網をかけるなど、かつてのような活用方法は制限されつつあります。しかしここにきて、新たな懸念が浮かび上がってきました。それが「修繕積立金・管理費」の問題です。

眺望・立地・豪華な共用部が魅力のタワマン

現在の日本では、都市部を中心に多くのタワーマンションが建設されています。これらは技術が進歩したことで1970年代から建設が始まり、2000年前後には規制緩和を受け、多くのタワーマンションが出現。最近では50階を超える超高層マンションも目立つようになりました。

 

「タワー」と名の付くマンションは多くありますが、一般的には、およそ20階建て以上、高さが60mを超えるマンションが「タワーマンション」だと考えればいいでしょう。世界的には70~100階建てのタワーマンションも数多く存在しますが、地震大国日本では、現時点では60階程度、200m超のものが最も高層です。

 

暮らす場所としてのタワーマンションは、好き嫌いがはっきりと分かれるかもしれません。筆者自身もタワーマンションは好きで、最大の魅力は眺望の良さにあると考えています。またそれだけでなく、立地のよさや豪華な共用部の施設も、大きな魅力として挙げられるでしょう。

 

マンションの資産価値を左右するものといえば、なんといっても立地です。多くのタワーマンションは駅近の好立地に建設されており、都心から離れた立地のマンションに比較して資産価値としても下落しにくい傾向があるといえます。

 

不動産価格は東京オリンピック後に下落すると言われ続けてきたものの、売買価格は現在でも高めに設定されており、新築・中古物件ともに、高止まりといえるでしょう。

実勢価格と評価額の乖離を応用した節税は、今後困難に

今年6月末、国税庁がタワーマンション節税の防止に向けて相続税の算定ルールを見直す方針を発表し、報道でも大きく取り上げられました。具体的には、マンションの評価額と実勢価格との乖離が大きくある場合、評価額を引き上げるというものです。

 

この報道で思い出されるのが、2022年4月19日の最高裁判決で国税側の勝訴が確定した「タワマン裁判」です。

 

相続財産である築9年43階建てのマンション23階が、約1億9,000万円の実勢価格に対し、評価額が4,000万円程度になっていたケースについて、評価額と実勢価格が大幅に乖離していることから税務署は「行き過ぎた節税」と判断。例外規定(申告が著しく不適当な場合は税務署が独自に再評価できる)を使いましたが、相続人はそれを不当として取り消しを求める裁判を起こしました。

 

結果、最高裁は「実質的な租税負担の公平に反する」とし、例外規定に基づく追徴課税を適法と認める判断を下しました。国税当局による処分を妥当とした、一、二審の判断を認め、相続人は敗訴しました。

 

※ https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91105

 

これらの点から、今後は節税対策としての活用は困難になるといえるでしょう。

共有部分の管理や維持保全、管理組合任せの所有者が多数だが…

タワーマンションを10階建て前後の一般的なマンションと比較した場合、管理費、修繕積立金が高いという統計があります。平成30年度国交省のマンション総合調査では、1戸あたりの管理費月額平均はマンション全体で16,231円に対して、20階建て以上のタワーマンションでは25,069円と、5割ほど高い負担となっています。

 

つまりタワーマンションは、マンションの全国平均よりも購入価格が高めの設定になっており、購入後の維持管理に際しても、管理費・修繕積立金・駐車場利用料など高額です。

 

とくに管理費・修繕積立金は上昇傾向にあるマンションは多く、「タワマン貧乏」にならないように注意することが必要です。

 

これまで、タワーマンションに限らず、投資や資産形成に向けて区分所有不動産を取得する際に、管理費・修繕積立金の価格や、その管理費・修繕積立金が後々どのように推移するかを確認・意識していた方は少なかったのではないでしょうか。

 

確かに利回りには影響があるのですが、むしろ、共有部分の管理や維持保全は、理事会がやってくれているので関知していないという方が大半ではないかと思います。

 

タワーマンションは一般的に規模が大きく、スケールメリットが働くと思いがちですが、実は豪華な共用部などがあるため、スケールメリット以上に管理委託費がかさみ、結果として管理費が高いものになりやすい傾向にあります。

 

とくに、24時間の有人警備や、コンビニ、プールといった人件費がかかる共用施設があると、自分が利用する・しないにかかわらず、維持管理コストがかかってきます。

 

修繕積立金も管理費同様、一般的なマンションと比較して高額になっています。マンション全体の統計では、月額修繕積立金の平均が11,875円であるのに対し、タワーマンションは月額平均13,699円と、管理費ほどに開きはありません。

 

しかし、長期修繕計画書を見ると、修繕積立金が今後大きく不足し、値上げを繰り返さなければ破綻する計画になっているのが現実であり、歴史の浅いタワーマンションの修繕積立金は、築年数経過とともに、修繕積立金の値上げが実施され、一般のマンションと比較して管理費の開き以上に、修繕積立金の開きの方が大きくなると筆者は予測しています。

 

つまり修繕積立金が月額で2万円や3万円、場合によっては4万円5万円になっていくタワーマンションも珍しくなくなるでしょう。

 

タワマンの購入にあたっては、その点を十分に踏まえたうえで検討することが、何より重要だといえます。

 

須藤 桂一
株式会社シーアイピー 代表取締役社長
一級建築士

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

 

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録