(※写真はイメージです/PIXTA)

どうやら年金だけでは老後、暮らすことはできないらしい……そんな事実が広く知られ、老後を見据えて資産形成に取り組む人が増えています。一方で実は、日本人の半数は年金だけで暮らしていける、という統計データも。本連載では、経済コラムニストとして活躍する大江英樹氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、老後のお金の知識について、一部抜粋してご紹介します。

死ぬまでに入ってくるお金は?

次に収入について考えてみましょう。

 

定年後に働けば、当然報酬が入ってきます。しかし、その額はどこでどういう働き方をするかによって全く違ってきますので、「いくら」ということは何とも言えません。中には定年後は一切働かないという人もいるでしょう。その場合、報酬は入ってきません。

 

ただ、全く働かなくても入ってくる収入があります。それが公的年金です。サラリーマンの場合は厚生年金という制度に加入しているので、誰もが支給開始年齢の65歳から受け取ることができます。

 

また、中には企業年金のある会社に勤めている人もいるでしょうから、そういう人であれば勤めていた会社から(厳密に言えば企業年金基金からですが)一定期間、年金が支給されます。

 

もちろん年金として受け取らず、退職金として受け取ることもできますが、そのあたりの話は少し複雑なので、今は単純に企業年金が支給される会社もあるということだけ知っておけばいいでしょう。

 

公的年金はいくら支給される?

では具体的に、公的年金は一体どれぐらい支給されるのでしょうか。

 

厚生労働省が発表している2023年度の年金額改定によれば、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は月額22万4,482円となっています。([図表4])標準的な年金額というのは平均的な収入(平均標準報酬<賞与含む月額換算>43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金 (老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金<満額>)の給付水準のことです。

 

つまり、妻がずっと専業主婦で働いていなかった場合の夫婦2人分の年金額が22万円あまりということになります。

 

この金額が生涯、つまり死ぬまで支給されます。ということは、先ほどの支出の計算と期間を合わせるために65歳から90歳までで計算すると、支給累計額は約6,734万円ということになります。定年まで働いた場合、何もしなくてもこの金額は受け取ることができます。

 

出所:厚生労働省「令和5年4月分からの年金額改定について」2023年1月20日
[図表4]令和5年度の新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額の例 出所:厚生労働省「令和5年4月分からの年金額改定について」2023年1月20日

 

公的年金のほかにも収入はある

先ほどの支出と金額を比べてみると、公的年金だけでも日常生活は問題ないということがわかります。

 

事実、厚生労働省の「国民生活基礎調査」の2019年版によれば、公的年金を受給している高齢者世帯のうち、収入に占める年金の割合が100%、すなわち年金だけで生活している世帯は48.4%となっていますから、約半分の世帯は公的年金だけで暮らせているということになります。([図表5]

 

出所:厚生労働省「国民生活基礎調査2019年版」
[図表5]公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合 出所:厚生労働省「国民生活基礎調査2019年版」

 

もちろん公的年金だけでは贅沢はできませんし、現役時代よりももっと旅行や外食を増やしたいということであれば公的年金だけでは足りないでしょう。

 

そこで出てくるのが企業年金です。これはない会社もありますので(むしろない会社の方が多い) 全ての人に当てはまるわけではありませんが、 企業年金がなくても退職一時金のある会社は一定割合あります。その金額は企業によってまちまちですから一概にいくらとは言えませんが、厚生労働省や東京都労働局のデータで見ると、平均は1,000万~2,000万円といったところです。

 

ここまでの金額は、仮に定年時に貯蓄が全くなくても手に入るお金ですから、生活の基礎となる部分については公的年金、場合によっては企業年金でほぼまかなえると考えていいでしょう。これに加えて自分が蓄えている預金や投資している株式、投資信託といったものがプラスされるのです。

 

注目のセミナー情報

【国内不動産】5月16日(木)開催
東京23区×新築×RC造のデザイナーズマンションで
〈5.5%超の利回り・1億円超の売却益〉を実現
物件開発のプロが伝授する「土地選び」の極意

 

【事業投資】5月25日(土)開催
驚異の「年利50% !?」“希少価値”と“円安”も追い風に…
勝てるBar投資「お酒の美術館」とは

次ページ“見える化”の効用
50歳からやってはいけないお金のこと

50歳からやってはいけないお金のこと

大江 英樹

PHPビジネス新書

「老後2000万円問題」や「年金崩壊」などという話を耳にして、老後のためのお金の心配をしている人は多いだろう。 しかし、そもそも、将来もらえる年金の額や、月々の生活にかかっている支出の額を、あなたはきちんと把握し…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧