「老後は1億円必要」は本当か?
まず支出から考えてみましょう。老後の生活費は一体どれぐらいかかるのか?
よく雑誌などで「老後の生活費は1億円かかる」という記事を目にすることはありませんか? この数字の根拠になっていると思われるのが、公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとにおこなっている「生活保障に関する調査」です。
2019年12月に公表された「令和元年度版報告書によれば、この調査は全国で18~69歳の男女4000人あまりから回答を得たデータを元に作成されています。すなわちアンケートの結果を集計したものです。([図表1]・[図表2])
具体的な質問項目として「あなたは、老後を夫婦2人で暮らしていくうえで、日常生活として最低いくらぐらい必要だとお考えですか」「経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、今お答えいただいた金額のほかに、あといくらぐらい必要だとお考えですか」とあり、その答えの平均がそれぞれ22.1万円と14.0万円です。
合わせると月額36.1万円になります。この金額を65歳から90歳までの25年間支出し続けると、その総額は1億830万円になります。
ただ、注意すべきことが2つあります。それは、多くの人が勘違いしていることですが、これはあくまでも老後の生活費がトータルで1億円ということであって、1億円不足するというわけではありません。後ほど出てきますが、一般的な水準で公的年金が受給できる金額を同じ65歳から90歳までで合計すると6,734万円ありますから、仮に1億円かかったとしても、その6~7割は特に何もしなくても手当てされることになります。
それに、この1億円という金額です。これは実態から導き出したものではなく、あくまでもアンケートに対する答えだということです。
総務省統計局の家計調査によれば、2021年の高齢夫婦世帯の月間の消費支出額は、実際には22万4,436円となっています。([図表3])これが実態であり、この金額を元に計算すると、老後の生活費は約6,733万円となります。
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