勝手に連帯保証人にされたら返済義務は生じる?
勝手に連帯保証人にさせられた場合、連帯保証人になることに本人が同意していない以上は原則として無効ですが、返済義務が生じてしまう場合もあります。
以下では、返済義務が生じる場合と生じない場合、それぞれについて解説します。
本人が同意していない連帯保証契約は原則として無効
契約は双方の合意によって成り立つものなので、そもそも本人が同意していなければ無効です。連帯保証人になるという約束は連帯保証契約という契約の一種であり、他人が勝手にサインして本人が同意していない場合は無効となります。
法律上、代理権がない人が勝手に他人の代理をすることを「無権代理」といい、正当な権限が無い行為である以上、勝手に契約を結んでも原則としてその契約に効力は生じません。
1円でも払うと追認したことになって返済義務が生じる
無権代理に関して民法第113条では、以下のように定められています。
【民法第113条】
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない
つまり、勝手に連帯保証人にさせられた場合には原則として無効ではあるものの、本人が追認した場合には、連帯保証契約に効力が生じて連帯保証人として返済義務を負うことになります。債権者から返済を求められた際、1円でも払ってしまうと自分が連帯保証人であることを追認したことになるので、借金を全額払わなければいけません。
身に覚えのない請求が届き、勝手に連帯保証人にさせられていたことが発覚した場合には、追認と見なされるような言動はしないように注意してください。
無効が認められず連帯保証人になった場合の対処法
親や兄弟、友人など、他人が勝手にサインしていた場合でも、追認によって連帯保証契約が有効と認められてしまうと、連帯保証人として借金の返済に応じなければいけません。
以下では、連帯保証人になった場合の対処法を解説します。
請求内容に従って借金を返済する
債権者から借金の返済を求められた場合、連帯保証人は本人に代わって返済する必要があるので、まずは請求内容を確認して返済額や返済期限を確認するようにしてください。
返済が遅れると遅延損害金が発生して負担が重くなったり、債権者が法的な手段に出て資産を差し押さえられたりする可能性があります。連帯保証人は保証人と違い、「まず本人に請求してほしい」と債権者に主張することはできないので、仮に債権者が主債務者本人に請求せず、最初から連帯保証人に請求してきた場合でも、返済に応じなければいけません。
債務整理を検討する
返済が難しい場合、返済を待ってもらえないか債権者と交渉することになりますが、そもそも返済できない状態で、待ってもらっても払えないのであれば、債務整理を検討することになります。債務整理の主な方法は、任意整理・個人再生・自己破産の3つです。
・任意整理
任意整理とは、債権者と個別に交渉して利息・遅延損害金のカットや分割での支払いに応じてもらい、合意した内容に基づいて3年(事情によっては5年)ほどかけて返済していく方法です。
個人再生や自己破産のように借金の元金は減りませんが、資産の売却等はせずに済むので個人再生や自己破産に比べると生活への影響は小さくなります。
・個人再生
個人再生とは、裁判所に再生計画案を提出して認可を受け、再生計画に従って3年(事情によっては5年)ほどかけて返済していく方法です。減額できる割合は借金の総額によって異なりますが、最大で10分の1に減額できます。
再生計画どおりに返済できるだけの収入があることや、借金の総額が5,000万円以下であるなど、個人再生をできる人の条件は決まっていますが、再生計画案が認可されて借金の減額が認められれば、減額後の金額のみ返済すれば良くなります。
・自己破産
自己破産とは、破産申立書を裁判所に提出して借金の返済を免除してもらう手続きです。任意整理や個人再生と違って借金の返済は免除されますが、財産は一部を除いて処分しなければいけません。
申立てを行うと、本人が返済不能で自己破産をせざるを得ない状態なのかどうかを裁判所が判断します。借金の総額や財産・収入の状況等から総合的に判断して、自己破産が認められれば借金の返済義務はなくなります。