今週の注目点…「米金利上昇=米ドル高」は再燃するのか
先週、米ドル安・円高が急拡大した一因には、米金利が大きく低下したこともあったでしょう。これには、CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)など注目の米インフレ指標が予想より弱い結果となったことを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)は7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げを終了するとの見方が広がったによるものと考えます。
ところが、金曜日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数が予想を大幅に上回ったことなどから、この「7月利上げ打ち止め」との見方が早速揺らいだようです。
実は、先ほど紹介した2022年7月に米ドルが急落したケースは、8月以降米ドル高・円安が再燃し、結果的には130円程度から150円を超えるまで米ドル一段高へ向かいました。
では、先週の米ドル急落も飽くまで一時的な現象に過ぎず、この後改めて「米金利上昇=米ドル高・円安」が再燃し、この間の米ドル高値である145円を超える動きに向かう可能性はあるのでしょうか。
2022年7月と最近の大きな違いのひとつに、米国債のポジションがあります。CFTC統計の投機筋の米10年債ポジションは、一年前と大きく異なり、最近にかけては空前の売り越しとなっているのです(図表6参照)。
あくまで、この米国債ポジションを前提にすると、2022年7月当時は、なお米インフレ懸念が強く、FRBが大幅利上げを続ける見通しのなかで、投機筋は米国債価格の下落、利回り上昇を警戒して米国債売りの拡大に動いたのでしょう。
これに対して、足元では既に空前の売り越しとなっていることから、さらなる米国債売りに動く余地は限られ、むしろ「売られ過ぎ」の反動から米国債の買い戻しに動く余地が大きいのではないでしょうか。このような投機筋の米国債買い戻しは、米国債価格の上昇、利回り低下をもたらす可能性のあるものです。
以上のように見ると、2022年のように、7月の米ドル急落から一転、8月以降は「米金利上昇=米ドル高・円安」再燃に向かう可能性は、この2023年の場合は低いでしょう。
7月末に予定されている日米欧の金融政策決定会合が近付くなかで、今週もとくに日米の金融政策を巡る思惑に揺れる展開になる可能性はあります。ただ、これまで見てきたことからすると、「米金利上昇=米ドル高・円安」再燃は限られる可能性が高いでしょう。
米ドル/円は、先週140円を割れてから一段安に向かったということで、140円がテクニカルな分岐点のひとつと考えられます。その意味では、これまで見てきたことを踏まえると、140円を大きく上回るのは難しいのではないでしょうか。
以上から、今週の米ドル/円は136~141円中心での展開を想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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