※画像はイメージです/PIXTA

土地を生前贈与しようと思っているが、どう進めていけばいいのか……と悩んでいる人は多いもの。そこで土地を生前贈与する場合の手順や税金、またその税金を圧縮する方法を解説します。

土地の生前贈与を行う際の「贈与税」を節税する方法、3つ

土地を生前贈与した際の贈与税の負担をできるだけ軽減する方法を紹介します。税制で設けられている様々な特例をできる限り使用しますが、それぞれの特例に使用できる条件が定められていますので、あなたが適用できる特例がないかどうか確認してください。

 

①婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅の土地を贈与するなら2,000万円まで無税

婚姻期間が20年以上の夫婦間において、自宅の土地・家屋を贈与する場合には土地・家屋の価格2,000万円までは無税で贈与することが可能です。特に複雑な要件はなく、婚姻期間が20年であることと、贈与する土地・家屋に実際に住んでいればOKです。

 

通称、「おしどり贈与」と呼ばれる有名な特例で、この特例を利用して夫婦間で贈与を行われる方は多いです。ただし、この特例を適用するためには贈与を受けた翌年の3月15日までに、税務署に対して申告手続きを行う必要があるので注意が必要です。

 

⓶「相続時精算課税制度」という特例で一時的に2,500万円まで無税

60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子又は孫(令和4年3月31日までは20歳以上の子又は孫)に対する贈与であれば、2,500万円まで一時的に無税で贈与をすることが可能です。この特例を「相続時精算課税制度」といいます。特に、現金や土地に限らず贈与するものの内容は問いません。

 

ただし、あくまで“一時的”に無税になるだけで税金がかからないわけではありません。将来、贈与をした父母や祖父母が亡くなりその財産を相続する際に、相続税の課税対象となります。言わば、税金の計算だけ“後回し”にできる制度です。制度の名称にあるように、「相続の時に精算をする」ということです。

 

これまで、この「相続時精算課税制度」を利用すると年間110万円の基礎控除が使える「暦年贈与」が行えなくなるというデメリットがありました。しかし、令和6年1月1日以降は「相続時精算課税制度」でも年間110万円の基礎控除が使えるようになります。

 

③複数年に分けて贈与することで110万円控除を繰り返し使う

年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。これを利用して、土地の贈与を複数年にわけてこまめに行うという方法があります。そうすると、1,000万円の土地でも、10年間にわたって分割して贈与すると贈与税は無税で贈与することが可能です。

 

ただし、贈与の度に専門家報酬を支払っていたのでは、おそらくトータルコストでは逆に高くついてしまうことも考えられますので注意が必要です。実行される前には、贈与税のことだけではなく、土地を生前贈与する際にかかるトータルのコストを計算してみてください。

◆土地の生前贈与をするときの価格は相続税評価額

土地の生前贈与をするときの贈与税を計算するための土地の価格は相続税評価を用います。相続税評価は、通常路線価から計算します。実際に売買する金額や固定資産税評価額とは異なるので注意が必要です。ただ、おおよその目安ですが、固定資産税評価額を1.14倍したものが相続税評価額になるように設定されています。

 

土地を生前贈与することのメリット・デメリット

なぜ、土地を生前贈与するのか、人それぞれ目的があると思いますが、ここでは土地を生前贈与した際のメリット・デメリットについて説明します。

 

メリットとしては大きく2つあります。一つは気持ちの問題です。ものを贈って感謝の気持ちを伝えるという目的で土地を生前贈与される方は実際にいます。

 

もう一つは、相続税の節税です。前述の2,000万円まで無税で贈与できる「おしどり贈与」を行えば、贈与を行った人の相続財産から2,000万円分の財産が減ることになり、その部分の相続税の圧縮効果が得られます。

 

次に、デメリットですが、やはり諸経費でしょう。ここまで述べてきたように、登録免許税や不動産取得税、さらに贈与税や専門家の費用などがかかります。

 

ちなみに、土地を子供に渡す渡し方で生前に贈与する以外には、亡くなったタイミングで相続で渡すという方法もあります。具体的には「遺言書」を作成し、「この土地は、息子に相続させる」と書いておくことです。

 

そうすると、相続によって土地を取得したものにはまず不動産取得税がかかりません。かつ登録免許税も固定資産税評価額の0.4%で、生前贈与のときの2.0%と比べると大幅に低い税率となっています。さらに、贈与税よりも相続税の方が通常は税率が低くなっています。

 

このように、土地を生前贈与するにはメリット・デメリットをよく理解し諸経費のトータルをよく比較検討する必要があります。

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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