3人の子に「毎年110万円」を10年贈与した父…贈与額3,300万、子に「全額課税」の可能性があるワケ【税理士が警告】

3人の子に「毎年110万円」を10年贈与した父…贈与額3,300万、子に「全額課税」の可能性があるワケ【税理士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家族により多くの資産を遺したいと考えたとき、相続税対策の定番といえるのが、「年間110万円」の生前贈与。しかし、昨年末の税制改正大綱を踏まえ、注意しなければ相続税負担が増える可能性があると、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏はいいます。生前贈与を行う際の「2つの注意点」について、本記事で詳しくみていきましょう。

今後の生前贈与は「相続時精算課税」の選択も視野に

黒「昨年末の改正大綱で、『相続時精算課税」にも基礎控除が設けられたのです」

 

――どういうことでしょうか?

 

黒「ここまで、ざっくりと「贈与税には基礎控除がある」と説明してきましたが、
厳密には贈与税の課税方法には

 

・暦年課税
・相続時精算課税

 

という2つの制度があり、どちらを利用するか納税者側が選ぶことができます」

 

――そうなんですね。それって、どう違うんですか。

 

黒「『暦年課税』とは、その年の1月1日~12月31日までに受けた贈与に対して課税する制度です。一方『相続時精算課税』とは、相続が発生したときに、生前贈与分もまとめて税金を精算する制度になっています。贈与時は2,500万円までが非課税枠となっています。

 

出所:財務省HP
[図表4]「暦年課税」と「相続時精算課税」の違い 出所:財務省HP

 

これまでは、贈与税というと基本的には暦年課税で、相続時精算課税はほとんど使われていませんでした。基礎控除110万円があるのも、暦年課税のみとなっていました。

 

しかし改正で、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられることとなりました。これにより、相続時精算課税でも年110万円までの贈与であれば非課税で、確定申告も不要になります。

 

(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。

 

① 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定死亡者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をしたあとの残額とする。

出所:令和5年度税制改正の大綱(なお、下線は筆者によるもの)。

 

さらに、相続時精算課税を選んだ場合は、先ほどの『7年前まで遡る』という持ち戻しルールは当てはまりません」

 

――そうなんですか!

 

黒「はい。相続時精算課税で相続税の課税対象として持ち戻されるのは、基礎控除「年110万円」を控除したあとの残額の合計でOKとなります」

 

――ということは、相続時精算課税であれば年110万円までは非課税で、持ち戻しルールも対象外ということで、今後は相続時精算課税のほうが節税になる可能性もありそうですね。

 

黒「はい。そういうケースも出てくると思われます。また、暦年課税との使い分けも考えられます。というのは、お孫さんへの贈与であれば、そもそも生前贈与加算の対象外なんです。

 

ですから、お子様への贈与は「相続時精算課税」、お孫さんへの贈与はこれまでどおり「暦年課税」で行うという使い分けもありかと思います」

 

――そんなことできるんですか!

 

黒「もしくは、相続までまだまだ先があり、110万円を超える贈与でも税率が相続税を下回るようであれば、これまでどおり『暦年贈与』でもよいかと思います。これは、年310万円までの贈与であれば、贈与税の税率は10%ですので、“将来高額な相続税を払うよりお得”という考え方です」

 

――気をつけるべき点はありますか?

 

黒「相続時精算課税制度を選択すると、あとから暦年課税へ変更することはできません。そのため、悩んだ際は税理士の先生などとよくご相談ください。

 

<<5つの生前贈与について詳しい解説が知りたい方はコチラ>>

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士

 

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※本記事は、YouTube『社長の資産防衛チャンネル【税理士&経営者】』より動画を一部抜粋・再編集したものです。

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