クレーム対応は、ビジネスを行ううえで避けては通れない業務です。いやな業務ではありますが、調査によると、クレームへの迅速で適切な対応に満足した顧客の8割以上がリピーターになるという結果も出ています。そのようななか、経営者は、すべての社員がクレームに適切に対応できるようにするために、マニュアル作りをする必要があります。では、クレームをビジネスにとってプラスに変えるマニュアルは、どのように作ればよいのでしょうか? みていきます。

クレームの種類

顧客がクレームを入れるチャネルとして、主に①電話②メール③チャット④SNS⑤対面という5つがあります。ここでは、各チャネルごとのクレームの特徴をご紹介します。

 

①電話

電話は緊急性が高いクレームや複雑な要件に利用されることが多い傾向があります。双方向的なコミュニケーションによって話に食い違いがあればすぐに解消できるのですが、顧客が感情的になっていてそれが難しいケースもあります。また、比較的年齢層の高い顧客が好むクレーム手段でもあります。

 

②メール

緊急性よりも正確に問題点を伝えたい、あるいは問題が深刻というケースが多くなる傾向があります。状況を改善させるために役立つ返信をする必要がありますが、十分な情報が得られない場合は追加の情報を依頼することになります。

 

③チャット

手軽に伝えるという特徴から、若者に利用される傾向があります。メッセージが短時間でやりとりされるため、誤解や齟齬が生じないように注意します。

 

また、テキストで伝えられる情報量には限度があるため、別チャネルでのコミュニケーションを提案することが必要になるケースもあります。

 

④SNS

企業に対して直接クレームを申し立てるのではなく、顧客がSNSに投稿することを通じて、問題点や不具合を拡散させるケースがあります。必ずしも問題の解決を求めていないことが最大の特徴で、場合によっては解決しないまま長期化します。

 

不用意な「炎上」を防ぐためにも、日頃からSNS担当者と連携を取り、クレームを発見した際の対応策を用意しておく必要があります。

 

⑤対面

直接対面でクレームを伝えに来る顧客は、不満や怒りなどネガティブな感情を担当者にぶつける傾向があります。顧客が感情的になっていて、クレームの本質が見えにくくなっている場合もあります。不満を抱えている顧客と直接対応しなければならないため、担当者にとっては最も精神的な負担が大きくなります。

クレーム対応の手順

ここでは、具体的なクレーム対応の流れとして、実際に顧客と対応する担当者の対応手順をご紹介します。

 

①謝罪

クレーム対応手順の最初にくるのが謝罪です。企業側に非がないと思われる場合でも、顧客に不満を抱かせたわけですから、謝罪は欠かせません。ただし、全面的に非を認めるのではなく、あくまでも不満を抱かせたことに対してのお詫びであることが重要となります。

 

全面的な謝罪をしてしまうと、後々不利な立場になる可能性があります。「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と、相手の感情の部分に焦点を当てた謝罪を伝える工夫が大切です。

 

②傾聴

謝罪に続いて、顧客の話を聞きます。クレームを寄せる人の多くは「話を聞いてほしい」と感じています。課題を聞き取り、適切な対応を見極めるためのヒアリングであると同時に、顧客の気持ちを落ち着かせるためにも話を聞くことが大切です。

 

話を聞く際は、態度や言葉遣いに気を配ります。うなずきや相づち、アイコンタクトは「きちんと話を聞いている」という姿勢を示し、オウム返しや復唱は「こちらの話を受け止めてくれている」という安心感を与えます。このようなコミュニケーションスキルを養うための、教育の仕組みづくりも必要になります。

 

③共感

原因追及や判断の見極めのためには、冷静に会話をすることが大切です。顧客の気持ちが高ぶっている場合は、クールダウンしてもらう必要があります。

 

まず、顧客がなぜ怒っているのかを考え、寄り添うことが重要となります。顧客が「この担当者はわかってくれる」と感じれば、徐々に気持ちが落ち着いていきます。ここでも②の傾聴がポイントになります。気持ちに共感するような言葉がけをしていきます。

 

④事実確認

ここまで進んだら、事実を徹底的に確認します。適切な対応方法を判断するためにも、可能な限り細かいことまで聞き出してメモを取ります。顧客情報(氏名や連絡先など)や担当者名、日時、クレーム内容、経緯まで聞き漏らすことのないよう、専用のフォーマットを用意しておきます。

 

⑤提案

事実確認が済んだら解決案を提示します。提案する際は押し付けだと感じられないような注意が必要です。断る選択肢を与えるような言い回しを意識し、提案を断られた場合も代替案を提示します。代替案や補償範囲などは、事前にシナリオとして用意しておきます。

 

⑥謝罪・感謝

顧客に提案が承諾されたら、最後に改めてお詫びをします。締めくくりの謝罪がおろそかになることで、新たなクレームが発生するケースも少なくありません。

 

また、自社の商品やサービスを購入してくれたことに対する感謝の気持ちを忘れずに述べることも大切です。失敗をチャンスに変える大切な時間ですから、気を抜かずに締めくくります。

 

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