自筆証書遺言と比較した公正証書遺言のメリット
自筆証書遺言と比較した場合の公正証書遺言の主なメリットとしては、次のものが挙げられます。なお、ここでは自筆証書遺言の保管制度を使用しない前提で比較しています。
自分で全文を自書する必要がない
自筆証書遺言では、自分で文章を考えて、全文を自分で自書する必要があります。これは、特に高齢やご病気の方などにとってはハードルが高い場合も少なくありません。
一方、公正証書遺言の場合、公証役場に相談すれば、遺言者の意図に沿った文章を公証人が組み立ててくれるため、自分で一から文章を考えたり自書したりする必要がありません。
無効になるリスクが低い
自筆証書遺言は、遺言が要件を満たせず無効になってしまうリスクが低くありません。たとえば、日付を「吉日」と表記しただけでも無効となってしまいます。
一方で、公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、無効となるリスクは低いといえるでしょう。
偽造や隠匿の心配がない
自筆証書遺言は、偽造や隠匿がなされるリスクが低くありません。
一方、公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、交付されるのはこれをもとに正式に作成された「正本」や「謄本」です。そのため、偽造されたり隠匿されたりするリスクはほぼないといえるでしょう。
相続開始後に検認が不要
自筆証書遺言であれば、相続開始後に家庭裁判所で検認を受けなければなりません。
検認とは、相続人に遺言書の存在を知らせるとともに、以後の偽造や変造を防ぐために行う手続きです。
一方、公正証書遺言は検認が不要とされています。なぜなら、先ほど解説したように、そもそも偽造などがなされるリスクがほとんどないためです。
自筆証書遺言と比較した公正証書遺言のデメリット
自筆証書遺言と比較した場合の公正証書遺言の主なデメリットは次のとおりです。
費用がかかる
自筆証書遺言は、紙とペンがあれば無料で作成することが可能です。一方で、公正証書遺言を作成するには、公証役場で手数料を支払わなければなりません。
手数料の額については後ほど解説します。
証人が2名必要である
自筆証書遺言は、自分1人で作成することが可能です。一方で、公正証書遺言を作成するには2名以上の証人に立ち会ってもらう必要があります。
証人には特に資格などは必要ないものの、次の人は証人になることができません(同974条)。
1. 未成年者
2. 推定相続人や受遺者と、これらの配偶者と直系血族
3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
信頼できる家族などは、ほとんどがこの欠格事由に該当してしまうでしょう。なお、思い当たる人がいない場合には公証役場の方で、有料で紹介を受けることができるほか、公正証書遺言の作成を依頼した専門家が手配してくれることも少なくありません。
公証役場との日程調整が必要である
自筆証書遺言であれば、思い立ってすぐにその場で作成することも可能です。一方で、公正証書遺言は事前の打ち合わせや日程調整が必要であり、思い立ってすぐに作成できるものではありません。
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