【税理士が解説】「インボイス制度」10月スタートだが…免税事業者が登録しなくてもいい「2つのケース」

【税理士が解説】「インボイス制度」10月スタートだが…免税事業者が登録しなくてもいい「2つのケース」
(※画像はイメージです/PIXTA)

消費税のインボイス制度の施行が2023年10月に迫っています。5月末時点で個人事業主の登録状況は約53%にとどまっています(東京商工リサーチ調べ)。特に従来の「免税事業者」は「課税事業者」となって「インボイス登録」をするかどうか選択を迫られていますが、前提として知っておいていただきたいのは、インボイス登録しなくても不利益が生じない場合もあるということです。税理士の黒瀧泰介氏が解説します。

消費税インボイス制度のしくみ

まず、前提となる消費税のインボイス制度のしくみを解説します。

 

消費税の計算方法は、原則として、「売上額に含まれる消費税額」から「仕入額に含まれる消費税額」を差し引くというものです。これを「仕入税額控除」といいます。

 

インボイス制度とは、この「仕入税額控除」を行うのに、仕入先が発行した「適格請求書(インボイス)」がなければならないという制度です。

 

なお、すべての課税事業者が「仕入税額控除」をしなければならないわけではありません。

 

年間売上高5,000万円以下(基準期間の課税売上高をさします。以下同じ)の事業者は「簡易課税制度」を選択することができます。これは、売上税額の一定割合のみ納税すればよいというものです。

インボイス制度で問題になっていること

では、インボイス制度で何が問題とされているのでしょうか。

 

消費税法においては、年間売上高1,000万円以下事業者は「免税事業者」となることが認められています。ここに問題が生じます。

 

インボイス(適格請求書)は「課税事業者」のみが発行できます。「免税事業者」は発行できません。ここに問題が生じます。

 

どういうことかというと、インボイス制度が施行されると、免税事業者と取引する相手方は、インボイスを受け取れません。したがって、消費税の計算を行う際に、上述した「仕入税額控除」ができなくなり、控除できない額を余計に負担しなければならないことになってしまうのです。

 

そこで、それを甘んじて受け入れるか、もし回避したければ、免税事業者との取引を打ち切ることになります。

 

一方、免税事業者は、年間売上高1,000万円以下であっても、あえて課税事業者にならないと、課税事業者から取引を打ち切られる可能性があります。

 

しかし、課税事業者になればよいかというと、問題は単純ではありません。

 

なぜなら、免税事業者の場合、消費税の納税義務を負わないことを前提に価格設定が行われていることがあるからです。

 

たしかに形式上「税抜価格+消費税」や「税込み価格」などの表記がされていますが、それはあくまで経理処理の便宜によるものです。消費税相当額がそこに転嫁されているとは限りません。もし、従来通りの収入のなかから消費税を納税することになると、実質的な手取りが減ることになります。

 

また、課税事業者になると、これまでにはなかった消費税の計算の手間も新たに加わります。

 

なお、これに対しては、激変緩和措置として、向こう3年間、納税額を売上税額の20%に軽減する等の「負担軽減措置」がおかれています。しかし、課税事業者になればインボイス制度の施行により負担が重くなることは避けられません。

 

そこで、従来の免税事業者としては、できることなら、インボイス登録をせずに免税事業者のままでいられれば、それに越したことはありません。

 

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