老々介護「過去最高63.5%」で憂慮される「手取り16万円・非正規・就職氷河期世代」の「親の介護問題」…公的保障制度の現状と課題

老々介護「過去最高63.5%」で憂慮される「手取り16万円・非正規・就職氷河期世代」の「親の介護問題」…公的保障制度の現状と課題
(※画像はイメージです/PIXTA)

2025年、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳の「後期高齢者」に突入します。その子の世代はちょうど「就職氷河期世代」のボリュームゾーンにあたり、親の介護の問題が襲い掛かります。そこで重要性を増してくるのが、介護と仕事を無理なく両立できるようにするための「給付」を軸とした「公的保障」の制度です。現状どうなっているのか、どのような問題があるのか、制度の内容と課題について、整理して解説します。

はじめに

統計によれば、就職氷河期世代の非正規で働く人々の平均月収は、「40歳~44歳」で21万円、「45歳~49歳」で20.9万円、「50歳~54歳」で21.2万円、「55歳~59歳」で21.0万円となっています(厚生労働省「令和3年(2021年)賃金構造基本統計調査」参照)。

 

これは、手取りにすると月約16万円くらいということになります。多少の地域差はありますが、食べていくのに精一杯という水準です。

 

その状態でもし、親が介護状態になれば、さらに、介護の負担が重くのしかかることになります。

 

そこで、介護と仕事を無理なく両立できる体制の整備が急務ですが、現状、給付を中心とした公的制度はどのようになっているでしょうか。

介護休業給付金の制度

まず、「介護休業給付金」の制度があります。これは、家族の介護のために仕事を休業する場合に雇用保険から給与の約3分の2(67%)を受け取れる制度です。

 

家族1名あたり93日を限度に、計3回まで受給することができます。この「93日」という期間は、介護に関する長期的方針を決めるために必要と想定された期間です。

 

◆介護休業給付金を受けられる条件

介護休業給付金を受けられる条件は以下の2つです。

 

【介護休業給付を受けられる条件】

1. 常時介護を「2週間以上」必要とする状態にある「家族」を介護するために休業すること

2. 期間の初日と末日を明らかにして事業者に申し出を行うこと

 

「家族」は、配偶者のほか、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫をさします。配偶者は内縁(事実婚)を含みます。

 

また、「2週間以上」という数字は、勘違いしやすいので注意が必要です。これは、対象となる家族が「常時介護を必要する状態」の期間が2週間以上だという意味です。「介護のために休業する日数」ではありません。

 

介護のために休業する日数は、2週間未満でもよいのです。

 

たとえば、家族の介護をするために2人で交代して合計2週間以上取得する場合や、他の人に頼んで何日か代わりに介護してもらう場合も、介護休業給付金の対象となります。

 

「常時介護を必要とする状態」は、以下のいずれかです。

 

【常時介護を必要とする状態とは】

・要介護2以上の認定を受けている

・【図表1】の状態(1)~(12)のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続している

 

厚生労働省HPより
【図表1】常時介護を必要とする状態の判断基準 厚生労働省HPより

 

介護休業給付金は雇用保険に基づく制度ですので、雇用者の就業規則に規定されていなくても、要件をみたしていれば受け取ることができます。労働者から申し出があった場合には、雇用者は拒否が許されません。また、介護休業を取得したことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。

◆介護休業給付金の受給資格

介護休業給付金の受給資格は、「正社員」と「非正規雇用の労働者」(パート、アルバイト、派遣社員等)とで異なります。それぞれ以下の通りです。

 

【介護休業給付金の受給資格】

1.正社員:引き続き雇用された期間が1年以上

2.非正規雇用の労働者:労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかでない

 

なお、非正規雇用の労働者については、以前は正社員と同様に「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件をみたす必要がありました。しかし、制度改定により、2022年4月1日から撤廃されました。

 

これにより、制度上は、非正規雇用の労働者も介護休業給付金を受けやすくなったということができます。しかし、そもそも雇用形態自体が不安定であることを考慮すれば、なお実効性に疑問があるといわざるを得ません。

 

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