(※写真はイメージです/PIXTA)

ESGやSDGsをはじめとした「企業によるサステナブルな取り組み」が取り沙汰される昨今。サステナブルを意識した商品は、「高いから売れない」と思われることも多いですが、売れない原因は別にあると、株式会社 YRK andの深井賢一氏はいいます。どんな原因でしょうか、みていきます。

高くても「ソーシャルプロダクツ」を消費者に買ってもらう方法

「ソーシャルプロダクツはどのような活動をすれば、値段が高くても購入するか」を聞きました。

 

出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magagineコラム
[図表3]ソーシャルプロダクツがどのような社会貢献に取り組めば、値段が高くても購入したいと思うか 出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magazineコラム

 

1位は「自分の関心が高い活動」2位は「深刻な社会的課題を解決する活動」でしたが、この2つの回答にある「活動」とは何を指すのか、それを探るのも絞るのも難しいかもしれません。

 

しかし3位「商品や事業を通した活動」4位「その企業やブランドらしい活動」については、今の事業や商品・サービスの「らしさ」を強調したその延長線上にある活動であれば、価格が高くても付加価値を感じると答えているのです。そして、5位は「最小限の活動」だと答えています。言いかえれば、「できることから」はじめてくれれば付加価値に感じると生活者は言っているのです。

 

時間とコストをかけて社会的な活動を準備するのではなく、「その商品・サービスが提供しているビジネスの延長線上」で「その会社らしさ」が出ていて「できることから」はじめた社会問題の解決に、その分の価格が上乗せされても、値打ちを感じる、つまり付加価値を感じると答えているのです。

 

6位には「自分も参加可能な活動」とあります。買うことが参加につながる、応援の表明になるというのも、付加価値なのです。

「らしさづくり」はブランディングそのもの

値段が高くてもそれを付加価値だと感じるのは、「いまのビジネスの延長線上」で「らしさを出すこと」だと生活者は教えてくれていますが、イメージできますか? 

 

「いまのビジネスの延長線」で新たになにかをはじめるというのも、考えてみると意外と難しいものです。そこで先ほど挙げたように、すでにはじめている社会や環境に対する取り組みを、今のビジネスに換算する/変換するということを考えてほしいのです。

 

それからもうひとつ。「うちの会社らしさ」ってなんですか? これは社長から社員一人ひとりまで、「うちの会社らしさってなんだろう」と考えたときに、だいたい同じことをイメージしているかどうかがポイントです。パッと思いつかないかもしれませんし、みんなバラバラかもしれません。

 

実は「らしさ」って簡単そうで難しいものなのです。「らしさ」とは強みであり独自性です。そしてなによりも「らしさ」は魅力でなければなりません。つまり「らしさづくり」は、ブランディングそのものなのです。

 

出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magagineコラム
[図表4]「らしさづくり」とブランディング 出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magazineコラム

 

ソーシャルプロダクツは、これまで取り組んできたことの「延長線上」で発見する

筆者がソーシャルプロダクツはこれからのマーケティングであり、ブランディングそのものだと考える理由がここにあります。だからソーシャルプロダクツは、特別なモノを新しくつくるということよりも、すでにやっていること、取り組んできたことのなかに、価値や強みや魅力を探して発見することが大事だと思っているのです。

 

ところが、ESGやSDGsを含めたサステナブルな取り組みをうちの会社で考えるために、他社の情報を収集しているうちに、「うちは他社に負けている」「うちは遅れている」「経営陣も社員も意識や理解が足りない」という考えに陥りがちです。

 

そうならないためには、「すでにやっているのに知らないだけ」「うまく伝えられていないだけ」「やっていることを価値に変換できていないだけ」という視点で会社のなかを探すことです。会社のなかだけでなく、サプライチェーンにも広げて見てください。

 

さらには創業の時代から今に至る歴史の中からも探してください。新しい発見があるはずです。その発見は、うちの会社に対する自信や誇り、魅力につながっていきます。そして、うちの会社を見直し再発見するきっかけになります。

 

こうした、「うちの会社のサステナブル探し」を、部門横断のワークショップでやることで、「うちの会社も大したものじゃないか」「もっと伝えていかないともったいない」という気持ちと行動が社内に広がります。

口下手なことで損する日本企業

最後にもうひとつ。企業への「好き」を引き出す重要な要素について触れます。まだサステナブルやSDGsが浸透する前の2017年、博報堂が実施した「生活者の社会意識調査」の結果にそのヒントがあります。

 

この調査では、「社会や環境に不誠実な企業の商品は買わない」という回答が1位で66%。2位が「社会や環境に悪影響な商品は買わない」が61%でした。「悪影響な商品」は買わなくて当然ですが、「不誠実な企業の商品」って? と思いませんか。誠実な企業と不誠実な企業の境界線はどこにあるのか、ということです。

 

出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magagineコラム
[図表5]誠実な企業と不誠実な企業の境界線 出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかるRe/BRANDING magazineコラム

 

誠実さ、それは「透明性」です。やっていること、実現していること、だけではなく、これからの課題や、解決できていない問題も、両面を伝えているかということです。日本の企業は口下手です。おくゆかしい企業が多いように思います。完成するまで、万全を期するまで、人様に恥ずかしくないレベルまで仕上げないと、言うべきではない、と思っています。

 

しかし誠実と不誠実の境界線は、「言うか言わないか」です。だとすれば、黙っていることはリスクになります。むしろできていないことや、課題はたくさん残っているが、小さなスタートを切りました、と伝えることがAPSPのアンケート結果(グラフ2)にあった「最小限の活動」への評価であり価値です。

 

「まだまだ不完全だけどがんばっているから応援したい」

「課題をなんとかしようとしているから協力したい」

「その会社らしい取り組みだから応援したい」

「目指すビジョンに共感した」

 

これが「好きになるメカニズム」であり、感情的差異性を引き出す要素なのです。

 

 

深井 賢一

株式会社 YRK and

CMO/取締役 兼 TOKYO代表

 

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