資金循環統計(23年1-3月期)~個人金融資産は2043兆円と過去最高を更新したが、家計は資金不足に転じる

資金循環統計(23年1-3月期)~個人金融資産は2043兆円と過去最高を更新したが、家計は資金不足に転じる
(写真はイメージです/PIXTA)

23年3月末、個人金融資産残高が2四半期連続で過去最高を更新した一方、家計は資金不足に転じました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏が、23年1-3月期の資金循環統計について解説します。

3.その他注目点:家計が資金不足・企業が資金余剰に転じる、日銀の国債保有割合が最高に

 

1-3月期の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると(図表10)、まず、従来資金余剰であった家計部門が2.3兆円の資金不足に転じた点が目立つ。家計が資金不足となるのはかなり稀なことで、消費増税前の駆け込み需要が発生した2014年1-3月以来のこととなる。賃金が伸び悩むなか、経済活動再開に伴う消費の回復が続いたほか、物価上昇が進行したことが資金不足に繋がったと考えられる。

 

 


一方、昨年10-12月期に資金不足となっていた民間非金融法人は9.9兆円の資金余剰に転じている。

 

原材料価格上昇が一服する一方で販売価格への転嫁が進んだことや、経済活動再開に伴う売上の回復が影響したと考えられる。

 

なお、政府部門の資金不足額は3.5兆円(昨年10-12月期は7.9兆円の資金不足)、海外部門の資金不足額は1.7兆円(10-12月期は2.8兆円)とそれぞれ縮小している。

 

3月末の民間非金融法人の借入金残高は488兆円と昨年12月末(487兆円)からほぼ横ばいで推移した一方、債務証券の残高は88兆円と12月末の91兆円から3兆円減少した(図表11)。このように、有利子負債が増加したにもかかわらず、民間非金融法人の現預金残高は338兆円と12月末の326兆円から大きく増加し、過去最高を更新している。

 

例年、1-3月期は現預金が増えやすいという季節的な傾向があるうえ、既述の通り、価格転嫁の進展や経済活動再開に伴う売り上げの増加が寄与したとみられる。

 

なお、1-3月期の民間非金融法人による対外投資(フローベース)を確認すると、対外直接投資は2.9兆円と、昨年10-12月期の4.2兆円からやや縮小したが、堅調な投資フローが続いている(図表12)。また、対外証券投資は1-3月期に5.1兆円(10-12月期は0.4兆円)と大幅に増加している。

 

 

 

3月末の国債(国庫短期証券を含む)発行残高は1230兆円と、昨年12月末(1198兆円)から増加した。

 

主な経済主体の保有状況を見ると(図表13)、最大保有者である日銀の国債保有高が582兆円と12月末(555兆円)から27兆円も増加し、全体に占めるシェアも47.3%(12月末は46.3%)へと上昇、過去最高を更新した。さらに、このうち1年超の長期国債に限れば、日銀のシェアは53.3%(12月末は52.0%)まで引きあがる。 

 

1-3月も日銀のさらなる金融緩和縮小観測などを受けて金利上昇圧力が強い状態が続き、日銀が指し値オペなどで抑制を続けたことが、国債保有高の大幅な増加に繋がった。

 

なお、海外部門の保有高は12月末から1兆円減少の178兆円となり、シェアも14.5%(12月末は14.9%)へと低下した。海外投資家による根強い日銀緩和縮小観測が背景にあったものとみられる。

 

ちなみに、銀行など預金取扱機関の保有高は137兆円と12月末比で3兆円増加した。増加は4四半期ぶりとなる。全体に占めるシェアは11.2%(12月末も同じ)横ばいであった。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年6月27日に公開したレポートを転載したものです。

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