(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年6月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

8.まとめ

【債券】

米国の長期金利は、もみあいながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレからFRBの利上げが当面続くものの、最終盤にあると考えられ、先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれるため、レンジ内でもみ合いながら小幅に低下するとみています。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締めを続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、日銀の長短金利操作の修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、やや上昇する展開を予想しています。

 

【株式】

S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は4-6月期が前年同期比▲5.7%(除くエネルギーセクターで同▲0.1%)、7-9月以降は増益転換が予想されています(6月30日。リフィニティブ集計)。ただ、先月に比べて、景気減速がやや意識されて全般的に小幅な下方修正となっています。一方、TOPIX採用企業の23年4-6月期の純利益は前年同期比+27.9%と予想されており、好調を維持しそうです(7月3日。3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。

 

今後の米国株式市場は、粘着質なインフレへの対応から強気一辺倒とはいかない展開が想定されます。とは言え、2024年以降のインフレ低下や金融政策の転換を見越した金利低下などから、徐々にレンジを切り上げていく展開が予想されます。一方、日本株式市場では高値警戒感が取り沙汰されており、上値が重くなる可能性があります。ただ、長期的な観点に立てば、今後の株価純資産倍率(PBR)の改善期待や業績面から見た割安感があります。スピード調整はあっても引き続き堅調な相場展開が続くとみられます。

 

【為替】

円の対米ドルレートは、FRBの利上げが当面続くものの、最終盤に入りつつあるとみられることから、もみあいながら緩やかに上昇する展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止と日銀の金融政策修正が意識され、円が小幅に上昇する展開を想定しています。円の対ユーロレートは、レンジ内でもみ合いながら緩やかに上昇すると予想します。ECBの利上げ継続がユーロのサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートは、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

 

【リート】

米国リート市場は、FRBの金融引き締め長期化観測や商業用不動産に対する融資厳格化が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済は、FRBの大幅な利上げを受けても比較的軽微な減速にとどまるとみられ、底堅く推移する見込みです。過度な景気悪化懸念が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる金融引き締めの継続から当面上値の重い展開を想定します。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

 

 

(2023年7月4日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本の株式市場は大幅続伸。高値警戒感が取り沙汰されるが…6月のマーケット振り返り【三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジストが解説】』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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