(※写真はイメージです/PIXTA)

年間110万円の贈与税非課税枠を利用した相続対策。実行したことはなくとも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 本来有効な相続対策となるはずですが、聞きかじり程度の知識で実行に移してしまうと、なかには税務署から追徴課税を要求されるケースも……。本記事では、Bさんの事例とともに、贈与の注意点について、富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士(税理士法人Bridge 代表)が解説します。

改正された「生前贈与加算制度」にも注意

上記のケースでは、「贈与自体が成立していない」として指摘を受けました。まずはきちんとした贈与の要件を満たし、その記録を残しておくことがとても重要です。また一定の期間の贈与は「生前贈与加算」として相続税の申告に含めなければならないので、その点も注意が必要です。

 

生前贈与加算とは、相続開始前7年以内に、被相続人から財産をもらっていた場合、その贈与財産をほかの相続財産に加えて、相続税の計算を行うという制度です。この制度は、以前は相続開始前3年以内の贈与が対象だったのですが、令和5年度税制改正で加算期間の延長が行われ、7年となりました。

 

なお、税制改正に伴って3~7年以内の贈与の計算式は少々複雑になっていますので、実際に相続が起きた場合には税理士等の専門家に確認するのがおすすめです。

 

税制改正後でも贈与による節税は可能

期間が7年に伸長され、贈与の非課税枠による相続税の節税は多少やりにくくなりました。ですが「令和5年税制改正の生前贈与加算」が施行されるのは、令和6年度以降です。そのため令和5年12月末日までに、駆け込みで生前贈与をすれば、加算の対象期間は「相続開始前3年以内」となります。そのため、本年までは従来の制度での贈与による対策はもちろん可能です。

 

また相続税の対策として生前贈与を利用するなら、相続人以外の方への贈与もおすすめです。以外の人とは、相続人とならない「孫やひ孫・子供の配偶者」などです。

 

贈与で財産をもらう人が、相続人でない場合には、「生前贈与加算」の対象とはならず、税制改正の影響も受けません。したがって、お亡くなりになる直前の贈与でも、非課税枠を使った税金対策が可能となるのです。

 

ただ孫やひ孫などの年少者に対する贈与は、もらった本人の管理実態が作りづらいので、しっかりと贈与契約書を作成する・場合によっては管理実態を残すために保険商品等を活用するなどの対策も考えるといいでしょう。

まとめ

税制改正があることからも税務署は生前の贈与について今まで以上に目を光らせています。愛する家族のため、せっかく長年かけて行ってきた税金対策が無駄にならないように、きちんとした「贈与」を実行するよう心がけましょう。

 

税務調査対策のために「贈与の記録を残す」「贈与を受けた財産はもらった人が管理する」しっかり覚えて実行しましょう。

 

 

黒田 悠介

税理士法人Bridge 

代表 税理士・政治資金監査人

 

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