(※写真はイメージです/PIXTA)

年間110万円の贈与税非課税枠を利用した相続対策。実行したことはなくとも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 本来有効な相続対策となるはずですが、聞きかじり程度の知識で実行に移してしまうと、なかには税務署から追徴課税を要求されるケースも……。本記事では、Bさんの事例とともに、贈与の注意点について、富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士(税理士法人Bridge 代表)が解説します。

贈与の成立要件とは?

贈与とは契約の一種で、民法549条で「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。

 

簡単に言い換えますと、あげる側(贈与者)は「あげた」という意思の表示が必要で、もらう側(受贈者)は「もらった」という認識が贈与の成立には必要になるということです。

 

税務調査では調査官は、財産漏れを発見するために、その「あげた・もらったがきちんと成立しているのか」を重点的に確認します。重要視されるのが、あげた・もらったという意思表示が記録として残っているか? もらった人がもらったその預金を自分自身で管理・支配しているか? という点です。

 

・贈与契約書(贈与の実態を確認できる書類)はあるのか?

 

・預金の口座開設書類に名義人本人(もらった人)が自署しているのか?

 

・名義人本人が住所や氏名の変更手続き・出金したなどの実績があるのか?

 

・銀行の届出印は名義人が本当に使用しているものなのか?

 

具体的にはこんな事を相続人本人・そして銀行を通じて調査し、総合的に「贈与の成立」を判断しています。

 

今回のケースではこの要件を満たしていないために税務調査官は「贈与が成立していない」と判断し、娘さんに相続税申告の修正を求めたのです。

 

・贈与契約書はある? →特に作っていない

 

・口座開設書類にもらった人が自署している? →父(あげた人)がしていた

 

・変更手続き・出金したなどの実績がある? →生前は父が管理していたのでない。

 

・届出印は名義人が使用しているもの? →父(あげた人)が用意した

 

気を付けたい類似のケース

同じようなケースとして、いわゆる「へそくり」も贈与が成立していない財産として税務署から相続税の財産漏れとして指摘を受けることがあります。へそくりは、相手に内緒でこっそり貯めるものですよね。

 

つまり「もらった」という認識はあっても、あげた側には「あげた認識がない」ことになるので、実は贈与は成立していないのです。

 

次ページ改正された「生前贈与加算制度」にも注意

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