(※写真はイメージです/PIXTA)

年間110万円の贈与税非課税枠を利用した相続対策。実行したことはなくとも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 本来有効な相続対策となるはずですが、聞きかじり程度の知識で実行に移してしまうと、なかには税務署から追徴課税を要求されるケースも……。本記事では、Bさんの事例とともに、贈与の注意点について、富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士(税理士法人Bridge 代表)が解説します。

愛する娘へ年間110万円の贈与をしていたAさん

70歳になったAさんは、最近、同年代の友人たちとは終活の話でもちきりです。友人のなかの1人から聞いた、10年前に亡くなった親から引き継いだ資産の相続税が高くて大変だったという話から、自分の娘への相続についても考えるようになりました。

 

「自分が亡くなったあとの相続税も高そうだ、愛する1人娘のために終活の一環でなにか税金対策をしておいてあげたい」と思い、贈与を使った税金対策を友人から聞きました。

 

「年間110万円以内の贈与は贈与税の非課だから税金もかからず、贈与申告も不要なので手間はかからないよ」と

 

Aさんはさっそく娘名義の口座を作り、毎年110万円を20年間振り込み続け、その後90歳で他界されました。

相続税の申告から2年後、税務調査でまさかの追徴課税に!

Aさんの娘のBさんは父が亡くなったことに伴い、相続税の申告を近所の税理士に依頼しました。しばらくは特段音沙汰がなかったのですが、2年後に突然税務署から連絡があり、相続税の税務調査が来ることに……。

 

後ろめたいこともないのでBさんは緊張しながらも税理士に任せ、「まぁ大丈夫だろう」と思っていました。しかし、税務調査官からまさかの「670万円」の追徴課税をするという申し出を受け、驚きとともに落胆しました。

 

税務調査官には、

 

「Bさん、あなた名義の口座に2,200万円がありますが、これはお父様の財産で相続税の申告対象です。相続税の申告が抜けていますので、『670万円』の本税と過少申告加算税・延滞税を申告納付してください」

 

と言われました。

 

指摘されたこの2,200万円の口座は、父が生前に毎年110万円を20年間振り込み続けてくれていた、あの預金口座だったのです。

 

申告漏れが指摘されたワケ

娘さんは生前に父から相続対策のために用意をしている通帳があると聞かされていたので、この通帳に関しては相続税の申告対象にしなくて大丈夫だろうと思っていました。また自分名義の預金だったこともあり、その2,200万円の通帳については相続申告を依頼した税理士にも伝えていませんでした。

 

「この通帳にある預金は娘さん名義になっていますが、贈与が成立していないので、実質的にはお父さんの預金です。いわゆる『名義預金』というものですので、お父様の相続財産です」と税務調査官は娘さんに説明しました。

 

ではなぜ今回の調査で「贈与が成立していない」と判断されてしまったのでしょうか?

 

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