個人事業主が死亡した場合、事業用の口座はどうなる?
金融機関は亡くなった個人事業主の親族から死亡の事実を知らされた場合、基本的に個人の口座であっても、事業用口座であっても凍結します。
これ以後、他の相続人から勝手に預金が引き出される心配はないものの、凍結口座から従業員等への給料の支払いや事務所の家賃の支払いもできなくなります。凍結を解除するには、相続人間で迅速に事業の引き継ぎや遺産の分与等を決定する必要があるでしょう。
事業の承継の際に発生する税金は
相続が発生した場合、亡くなった個人事業主の事業を引き継いだ場合、いずれも税金は課せられてしまいます。主に課税される可能性のある税金は次の通りです。
相続税
相続の際に発生する税金で、申告・納付の期限は亡くなった個人事業主の死亡日の翌日から10ヵ月以内です。ただし、プラスの財産は多くても債務があればその分を差し引けます。
更に相続税の基礎控除「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」であり、課税価格が基礎控除分を超えなければ、申告も納税も不要です。
相続が発生したからといって、必ず相続税が発生するわけでは無いので慎重にプラスの財産と債務を調査しましょう。
所得税
個人事業主は1年間に生じた所得の確定申告を行う必要があり、毎年2月中旬から3月中旬までに手続きを行い所得税を納付します。
こちらの申告方法には税務署の窓口申告・郵送申告の他、電子申告(e-Tax)も利用できます。青色申告をe-Taxで行う場合は65万円の特別控除が適用されます。
その他の税金
亡くなった個人事業主から事業を引き継いだ人に必ず課せられるわけではないですが、例えば先代の2年前の年間課税対象となる売上高が1,000万円を超えていた場合、引き継いだ1年目から消費税の納税義務が生じます。
また、先代の所有していた土地・建物を引き継いだ場合、固定資産税・都市計画税が課せられます。固定資産税は原則として税率1.4%かかり、都市計画税は0.3%が上限です。
個人事業主の相続対策に有効なのは?
個人事業主は亡くなる前に、いろいろな方法で節税対策を講じることが可能です。
①個人事業の法人化
法人化により事業用資産は会社のものとなるので個人用資産と区分できます。会社の株式自体は相続税の対象ですが、法人の株式の相続は事業用口座が凍結されることはなく、遺産分割がしやすいメリットがあります。
②個人版事業承継税制
青色申告をしていた個人事業主の事業が引き継がれた場合、その事業用資産の相続税・贈与税が軽減される制度です。一定の条件に合致し都道府県知事の認定を受ければ、贈与税または相続税100%猶予または免除されます。
③生前贈与
生きている間に家族へコツコツ財産を贈与する方法です。贈与税の基礎控除は受贈者1人につき年間110万円です。1年で贈与額を110万円以下に抑えれば、原則として受取人へ贈与税がかかりません。