(※写真はイメージです/PIXTA)

政府の「新しい資本主義」では、働き手の学び直し(リスキリング)を促進し、労働市場を活性化させようとしています。そのようななか、アライアンス・バーンスタイン株式会社の責任投資ヘッド、臼井はるな氏は「人材(人財)の有効活用は、いまや企業や日本経済の成長にとって欠かせない一大テーマ」だといいます。本記事では、人材の有効活用に取り組んでいる企業について、投資家の目線での注目点を整理します。

成功を収める企業に見るいくつかの共通点

それでは、企業がダイバーシティ&インクルージョンを達成するには、どのような考え方が大切になるのでしょうか。当社では、米国の小売業界とテクノロジー業界において、この分野で成功を収めている企業を調査した結果、いくつかの共通点を見出しました。

 

1つは経営陣がイニシアティブを取って、職場のリーダーに推進を促していること。たとえば、小売り大手のターゲットは、組織全体での推進に向けて、個々の事業グループが独自のダイバーシティ&インクルージョンに対するアプローチを取り入れています。

 

また、プログラムを導入し、ダイバーシティを推進する企業も好事例です。ナイキやTモバイルは、女性やさまざまな従業員の職場におけるキャリア推進を目指したスポンサーシップ・プログラムを導入し、若い従業員の支援や組織内での意思決定の改善につなげています。

 

こうしたプログラムを導入している企業の多くは、社内の分析リソースの少なくとも一部をダイバーシティ&インクルージョンの評価に振り向けています。

 

半導体メーカーのエヌビディアには、社内のさまざまな分野から役職員のデータを収集するインサイト・チームがあり、人事部門の分析チームと密接に協力し、継続的に改善すべき分野を把握しています。同社のリーダーは、役職員の報酬や昇進といった人事に関する意思決定の際に、データを活用することが推奨されています。

従業員エンゲージメントが低い日本企業

新しい世代ほどダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みがますます不可欠になると考えています。こうした傾向は従業員のロイヤリティ(忠誠)にも密接に関連します。

 

人的資本経営において、重視される指標の1つがエンゲージメント(働きがい、士気)です。なぜならエンゲージメントの向上が業績アップにもつながるためです。

 

経済産業省による調査からは、企業の営業利益率や労働生産性と従業員エンゲージメントスコア(ES)のあいだには、一定の正の相関関係(ESが高いほど、営業利益率や労働生産性が高い)が確認できます。

 

さて、日本企業のエンゲージメントは相対的に高いのか低いのか。残念ながら、同じ経済産業省の調査では、日本の従業員エンゲージメントは5%と、世界平均の20%や米国/カナダの34%、東アジアの14%と比べてもかなり低い位置にあるようです。

 

投資家は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進させる従業員サポートがしっかりと機能し、企業が人的資本を育てていこうとしているのか注視しています。企業文化に貢献するとともに、競合他社との優位性から企業業績の向上につながれば、株価という市場評価も高まります。

 

役員報酬に従業員のエンゲージメントを連動させる日本企業も登場してきています。人的資本経営への関心が高まるいま、日本企業が積極的に推し進めるべき施策はまだまだ多いといえそうです。

 

 

臼井 はるな

アライアンス・バーンスタイン株式会社

責任投資ヘッド

 

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【ご注意】※本稿は、ABのリサーチブログ「知の広場」の「ダイバーシティは入り口が肝心」を参考に、再編集したものです。詳細については当該ブログをご覧ください。
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当資料は、2023年7月21日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が再編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

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