今回は、勤務医であっても、講演料などの雑所得が多ければ、法人を設立するメリットが大きいことを解説します。※本連載は、なごみグループ(税理士法人 和と社会保険労務士法人 和の合同事務所)の著書、『【増補改訂版】開業医・医療法人……すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)の中から一部を抜粋し、すべてのドクターの節税に役立つテクニックをご紹介します。

法人化によって経費計上や所得分散が柔軟に

《勤務医の会社設立》

節税効果★★★★☆ 節税難易度★★★☆☆

 

勤務医やフリーランスの医師のなかには、病院からの給与所得以外にセミナーなどでの講演料や原稿料などの収入があり、それを雑所得として確定申告されている方も多数いらっしゃるでしょう。

 

このような医療サービス以外の収入を対象に、勤務医であっても法人を設立することで節税ができます。法人では医療サービスの提供はできませんが、下記のようなサービスや業務は行なうことができます。

 

講演、原稿執筆、セミナーの開催および運営、医療・医業コンサルティング業務、医療関連用品の販売、医療従事者の教育・指導業務、医療訴訟に関する医学的アドバイス業務等

 

法人設立後、個人で雑所得としていた契約先と新たに法人で契約を締結し、その後の収入を法人の収入として計上します。

 

経費に関しては、車両の経費化やガソリン代、通信費など業務に必要なものは、法人で経費計上ができます。また、代表者が医師である必要はありませんから、奥様や親族を代表者にし、役員報酬による所得分散も可能となります。

 

ただし、つぎの内容に該当する契約については、個人の給与所得と判断され、法人での収入とすることができません。注意が必要です。

 

①時間的拘束

就業時間が厳密に管理されている

 

②報酬の労務対価性

業務の結果に関係なく、時間または日数に応じて支払われる

 

③事業組織的従属性

指揮監督が病院側にある(就業規則に服し、違反等に対しては懲戒処分等もあるなど)

 

判断しがたいポイントでもありますので、ご自身で判断せず、法人設立前に税理士に相談するなど専門家の意見を交えて検討されることをおすすめします。

個人契約と法人契約での税額を比較すると・・・

【例】個人契約の収入年間500万円を法人契約へ切り替えた場合

(個人所得税・住民税率は最高税率の55%、法人税率30%と仮定)

 

①個人の収入とした場合(雑所得)の税額

(収入500万円-必要経費50万円)×所得・住民税率55%=248万円

②法人の収入とした場合の税額

(収入500万円-経費400万円)×法人税率30%=30万円

※経費400万円の内訳

  代表取締役である奥様の役員報酬 100万円、

  自宅の事務所利用の家賃・水道光熱費・電話代 40万円、

  車両の減価償却費 100万円、保険料 60万円、

  その他経費 100万円

 

法人税と個人の所得税・住民税の最高税率を比較すると、法人税率のほうが低く、経費に関しても法人のほうが計上しやすいことから、法人の収入としたほうが納税額は結果的に抑えることができます。

 

なお、法人の設立・運営にかかる主な費用としてはつぎのようなものがあります。

 ・設立時の登記費用(株式会社:約30万円、合同会社:約15万円)

 ・毎期の税務申告作成料など

 

Point

講演や原稿執筆などによる収入がある勤務医にとっては、一考の価値があるでしょう。

 

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本連載は、2016年7月21日刊行の書籍『増補改訂版】開業医・医療法人……すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

【増補改訂版】開業医・医療法人……すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル

【増補改訂版】開業医・医療法人……すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル

税理士法人 和、社会保険労務士法人 和

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