今回は、災害や窃盗などで発生した損失の一部を、所得から控除できる仕組みをお伝えします。※本連載は、なごみグループ(税理士法人 和と社会保険労務士法人 和の合同事務所)の著書、『【増補改訂版】開業医・医療法人……すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)の中から一部を抜粋し、すべてのドクターの節税に役立つテクニックをご紹介します。
災害や犯罪だけでなく、シロアリ被害の損失も控除可能
《雑損控除の申告》
節税効果★★☆☆☆ 節税難易度★☆☆☆☆
忘れがちな節税策の1つに、雑損控除があります。雑損控除とは、自然災害や盗難によって住宅や家財に損害があったときに、所得控除されるものです。
・対象となる損害
①地震・風水害・冷害・雪害・落雷等の自然現象による災害
②火災、火薬類の爆発などの人為的な災害
③シロアリ等の害虫による災害
④盗難・横領による災害(詐欺や恐喝等による被害は、対象外)
・対象になる資産
生活に通常必要な資産が対象となります。主に居住用家屋や家財、その他生活の用に供している動産で一定のものとされています。
配偶者控除や扶養控除の対象となっている親族が所有する資産であっても、ご自身の雑損控除の適用を受けることができます。
高価な指輪など一般的な生活に不必要な資産は対象外
・対象とならない資産
①棚卸資産
②事業用の固定資産・山林
③生活に通常必要でない資産
別荘や競走馬など、趣味や娯楽のために保有している動産や不動産、1個または1組当たりの価格が30万円を超える貴金属や書画・骨董品は、対象になりません。奥様の100万円の指輪や先生の1組50万円のゴルフセットは対象外です。普段、通勤や買い物に使っているクルマは対象になる可能性がありますが、趣味で購入した高級車はダメですよ。
・控除額
①損害金額+災害関連支出額−保険金等で補填される金額−総所得金額等の10%
②災害関連支出金額−5万円
①または②のいずれか多いほうの金額です。
災害関連支出とは、災害により滅失した住宅、家財を除去するための費用や豪雪による家屋の倒壊を防止するための雪おろし費用などが該当します。
・雑損控除を受けるための手続き
①確定申告書に雑損控除に関する事項の記載をする。
②災害関連支出の金額を証する書類を添付または提示する。
Point
損失を証明する書類をなくさないようにしましょう。
損害保険等の手続きを忘れないようにしましょう。
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なごみグループは、税理士法人 和と社会保険労務士法人 和の合同事務所。
《税理士法人 和》
税理士法人 和(なごみ)は、平成4年創業、本社は大阪市中央区。東京都千代田区に支社。クライアント数、約400件。医業経営コンサルタント協会会員、TKC医業・会計システム研究会会員、TKC全国会資産対策研究会会員、日本M&Aセンター理事会員、JPBM医業経営部会会員、一般社団法人メディカルスタディ協会監事。
地区医師会の顧問や医療機関へのアドバイス等の医業経営コンサルティングと、出資持分のない医療法人への移行などの事業・財産承継を中心とした資産税コンサルティングに強みを持ったサービスを提供している。
厚生労働省委託事業や金融機関等でのセミナー講演は年間40回以上にのぼる。
主な著書に『ドクターのための医院の財産承継&相続パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)ほか多数。
《社会保険労務士法人 和》
社会保険労務士法人 和(なごみ)は、昭和63年創業、平成21年法人化。
本社は大阪市中央区、大阪府摂津市に北摂オフィス。労働保険事務組合一般社団法人和併設。 日本人事労務コンサルタント特別会員、日本報連相センター法人会員。
病院、クリニックをはじめ多数の企業に人事労務サービスを展開。
医院開業時には採用支援・労務管理・給与計算等をまとめた「開業支援パッケージ」を提供するなど、ドクターの開業に関する不安を解消するツールを提供している。なかでもスタッフに院内ルールを定着させるための「就業ハンドブック」は、イラストや図式を挿入し、口語調で親しみやすいと定評がある。
平成27年11月プライバシーマーク取得。
写真は税理士法人 和の大阪事務所代表社員、岡本泰彦氏。
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