時間給からの脱却
「それぞれの場所」「それぞれの時間」で働くことになって、生活給&時間給からの脱却が一気に進む可能性が高い。
まずは、働く側の私たちが時間給から脱却することを目指そう。
世の中の流れも脱時間給を後押ししている。「メンバーシップ雇用の正社員ならサービス残業は当然」という間違った古い認識の会社は減少し続けており、求人広告でも残業について言及する会社が増えた。残業が多い会社では、そもそも残業見合手当をあらかじめ支給するようになっている。残業自体を禁止する会社も増え始めている。
政府も労働時間に対する規制を強めている。
2017年の働き方改革実行計画、2018年からのいわゆる働き方改革関連法案(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)などの動きはテレワークに対して追い風だし、メンバーシップ型の雇用こそが30年間伸び悩んだ低い生産性の元凶だ、という議論すらあった。
今では残業時間が月60時間以上になると、それまでの残業加算25%の割合が50%になる。100時間以上の残業が認められるのは実質的に年に1か月のみだし、月45時以上の残業でも年6か月が上限と定められるようになった。そのために就業時間管理を徹底する動きが進んでいた。
しかしそこにコロナショックが起きたため、就業時間管理があいまいになろうとしている。
厳密に管理しようとする会社もあるが、たとえばPCを使わない作業について管理は可能だろうか。実質的な裁量労働である高度プロフェッショナル制度(2019年4月施行)では、労働時間ではなく、健康管理時間の把握と休日付与、健康福祉確保措置の実施、苦情処理措置などを必須対応として定めるようにしている。むしろ、そちらの方が現実的だという意見もあるくらいだ。
そんな状況の中、私たちは時間給から脱することができるだろうか。意識を変える準備度合は、例えば次の質問に対して、どう答えるかでわかってくる。
質問:あなたは次のどちらの仕事に就きたいと思うだろうか。
AとBを比較して、どちらが働きやすいと思うか。どちらが働き甲斐があると思うか。その答えは人によって異なるだろう。より詳細に比較すると次のような計算になる。
会社側が新規見込み先を安定的に用意してくれる限り、条件はそれほど変わらない。なぜなら3件×22日(月平均労働日数)×10%=6.6件であり、受注成功手当は(6.6-4)×2万円=5.2万円となる。つまり、Bでも月給は30.2万円となり、Aの30万円とほぼ変わらないからだ。
しかし新規見込み先の件数が減ったり、平均成約率の10%よりも低い成約率でしか営業ができないようであれば、30万円+残業代がもらえるAの方が条件が良いということになる。反対に成約率を高くできるのならBの方がよいだろう。
このような給与の仕組みにメンバーシップ型、職務(ジョブ)型、という区分は関係しない。メンバーシップ型でもBのような給与体系の会社はあるし、職務(ジョブ)型でもAのような給与体系の会社はある。
メンバーシップ型と職務(ジョブ)型の違いは、残業代やインセンティブの計算基準ではなく、従業員の仕事全体に対する金額設定時の違いであり、採用・昇給・昇格時に強く影響するものだ。
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