「夏冬賞与」と「退職金」が消える?「脱メンバーシップ型」へとシフトする社会で起こりうる変化

「夏冬賞与」と「退職金」が消える?「脱メンバーシップ型」へとシフトする社会で起こりうる変化
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業が、終身雇用を前提に職務のない雇用契約である「メンバーシップ型雇用」を脱すると、世界標準ではない「夏冬賞与」や「退職金」の制度も見直されることになるでしょう。本稿では、平康慶浩氏の著書『給与クライシス』(日経BP日本経済新聞出版本部)から一部を抜粋し、「脱メンバーシップ型雇用」の未来に、私たちはどう備えるべきか考えます。

賞与払いのローンができなくなる、ということ

 

賞与についてはコロナショックがひと段落すると、以前と同じような仕組みに戻るとみる人も多い。しかし現在の検討の流れからすると、一部の会社で賞与制度を廃止して年俸制に移行する動きが増えるだろう。あなたの会社がもしそうなら、どう対応すべきかを書いてみたい。

 

そもそも夏冬賞与の仕組みは日本独自のもので、太平洋戦争後に主に組合運動によって広まった仕組みだ。戦後復興から高度成長に至る過程の中で生まれた会社の利益を前提として、基本給を引き上げて人件費負担リスクを高めたくない経営側と、生活水準を引き上げるための総報酬額を高めたい労働者側との交渉によって、盆暮れに合わせた一時金として支給され始め、今に至る。

 

しかしメンバーシップ型の人事制度に対する対義語のように職務(ジョブ)型が語られている現在、賞与の仕組みも世界標準にしていこうとする動きがある。

 

そして世界の賞与の仕組みを見てみれば、基本的には年度末の利益配分賞与のみだ。

 

支給対象はおおむね管理職以上で、配分額を調整するための評価も行わない。賞与原資をベースに、それぞれのランクに応じて一定額を配分することが多く、その額も毎年安定しているわけではない。あくまでも賞与、なのだから。

 

とはいえ日本の賞与の仕組みが業績に対するバッファとして機能していたことから、そこまで一気に変えようとしない会社も多いだろう。たとえば年収600万円を支払うとして、これまでは35万円×12か月+賞与年間5か月分(夏冬それぞれ90万円)=600万円としていた会社が、50万円×12か月=600万円、とすることに躊躇するからだ。

 

ただ、実際にそのような制度改定をする会社が出てきていることもまた事実だ。

 

会社にとっても労働者側にとっても、経営あるいは生計のバッファだった賞与の仕組みがなくなるとき、個別に貯蓄などで対応することが求められるようになる。

 

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給与クライシス

給与クライシス

平康 慶浩

日経BP日本経済新聞出版本部

同じ仕事をしている限り、給与は「ずっとそのまま」の時代!? これからやってくる”ジョブ型”時代を僕たちはどう生きるか―― ”そうはいっても、日本はまだまだ年功序列でしょ? ” ”なんだかんだ言って終身雇用は続く…

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