永らく定番人気だった「自由が丘」
「自由が丘」といえば、永らく「住みたい街ランキング」などで常に上位に君臨する人気の街でした。自由が丘自体は昔からそれほど変わっていないのですが、ライバルの街がこの十数年間で大きな変貌を遂げたのと比べると、変化に乏しい点が物足りなく映るのか、徐々に順位を下げています。
“トレンディ”で“オシャレ”…成功した自由が丘のブランディング
私は学生時代もよく自由が丘で遊んでいましたし、東京急行電鉄に入社した1年目にも、自由が丘駅で駅員研修を受けていたので人気タウンだった往時をよく覚えています。
1980年代の自由が丘は非常にトレンディなイメージを醸し出していました。強いブランド力をもった大手企業も自由が丘に集まり、感度の高い若者などをターゲットにしたアンテナショップをたくさん出店していました。もちろん若者だけでなく、お金と時間に余裕のある大人の女性グループがグルメやショッピングを楽しむ街でもありました。
1988年に創刊した「Hanako」などの各情報雑誌が「自由が丘特集」を組むと飛ぶように売れましたし、雑誌を片手に街を歩く女性たちもたくさん見かけました。
地元商店街も街の活性化にいろいろ知恵を絞り、街路ごとに「マリクレール通り」「メープルストリート」「カトレア通り」など素敵な名をつけ、一部の通りを格調高い石畳にするとともに、駅南口の九品仏川緑道に木製の素敵なベンチを置いて、自然と人が座るように仕掛けることによって、不法駐輪対策をするなど、「元祖」歩いて楽しいまちづくりを実践してきました。
自由が丘商店街振興組合は、その加盟店が約1300店と国内最大級の商店数を誇ります。毎年その1割前後が入れ替わるということで、競争も激しいですが、新鮮味を保ち続ける商店街でもあります。
店数の割に、大型店やチェーン店が少ないのも特長です。商店街もとても先進的で、ユニークな集客や、イベントなどを積極的に仕掛けているのも特筆すべきことです。たとえば有名な「女神まつり」や「スイーツフェスタ」などもその一つで、それらのイベント集客力はとても大きいものがあります。
独特の“界隈性”ある街並みがウィンドウショッピングに最適
もうひとつの魅力は、あまり大規模なビルがないこと、さらに複雑な細い道で街が繋がっていることによって生まれる独特の界隈性(かいわいせい)にあると思います。右をみても、左をみても、すぐそこにショップのウィンドウが眺められて、あまり車の交通を気にせず、ぶらぶら歩きをするには最適な街です。
オシャレなだけでなく、個人商店が連なる「自由が丘デパート」や、少し猥雑な飲み屋街「美観街」など、昭和の雰囲気を色濃く残した貴重なエリアも共存しています。そこが自由が丘の大きな魅力になっています。
しかし、逆にそれらが防災上の脆弱性にも繋がっています。歩道がない道路も多く、ベビーカーや足の不自由な高齢者などには少し歩きにくい面もあります。緑や広場空間が少ないのも課題だと思います。
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