(※写真はイメージです/PIXTA)

「住みたい街ランキング」の常連といえる、東急東横線沿線。「自由が丘」も、かつては「住みたい街」として永らく定番人気でした。しかし、その人気に陰りがみえていると、東急株式会社常務執行役員の東浦亮典氏はいいます。自由が丘の過去と現在、そして今後の行く末について、永らく比較されてきた小田急線・井の頭線「下北沢」との間にできた“決定的な差”も交えてみていきましょう。※本連載は、東浦亮典氏の著書『東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

下北沢が成功する一方…文化の香りが薄まった自由が丘

私の学生時代には、自由が丘には映画館もまだ3館あり、特に「武蔵野推理劇場」はお気に入りの映画館で、非常によい作品をかけていたので、よく入り浸ったものでした。

 

その武蔵野推理劇場も2004年には閉館し、いつの間にか自由が丘に映画館はなくなってしまいました。人が集まって演劇や音楽コンサートなどを楽しめるホールなどもなく、最近の自由が丘は少し文化の香りが薄まってしまい寂しく思います。

 

再開発でより高い人気を獲得した下北沢

自由が丘は永らく小田急線・井の頭線の下北沢駅と比較されてきました。十数年前までは両方の街に大きな差はなかったと思いますが、この数年で小田急線が地下化したことを契機にして、下北沢駅前は大きく変貌し、高い人気を獲得しました。

 

下北沢は再開発で駅前広場ができました。本多劇場をはじめとする、大小さまざまな規模の劇場やライブハウスなどが多数あり、成功を夢見て熱いハートをもって日々研鑽を積む若いミュージシャンや劇団員などが毎日街を跋扈(ばっこ)しているクリエイティブで活気のある街下北沢に、これまでなかったホテル機能もできました。

 

決して街のイメージをスケールアウトするような大規模な開発ではなく、地下化した線路の上部や高架下などを上手に活用して、従来の下北沢の街にうまく馴染む開発を小田急や京王電鉄が行ったことで、街に新たな魅力を加える結果になりました。

「危機感」を原動力に進む再開発

それと比較すると、最近の自由が丘は少し来街客の年齢層が上がってきていて、全体的に落ち着いたおとなしい雰囲気の街になっている気がします。

 

自由が丘の地元関係者も、街の老朽化やブランドイメージ低下に対する危機感があり、いくつかの街区で再開発の機運が急速に高まってきています。古くから地元の結束力が強く、街に対するプライドも高いので、なんとかしていこうという想いがあります。

 

そうした想いに応えて、東急では2006年に大井町線車両の留置場だった敷地の暫定利用でできた商業施設「トレインチ自由が丘」を、2022年11月にリニューアルオープンしました。店舗の入れ替えに留まらず、自由が丘に不足していたラウンジ機能、オフィス、イベントやワークショップも開催できるレンタルスタジオなどを併設しています。

 

また現在、都市再生推進法人となっている地元のまちづくり団体「株式会社ジェイ・スピリット」が中心となって、かなり精緻な自由が丘駅周辺のグランドデザインを描いています。

 

1番に名乗りを上げた「自由が丘一丁目29番地区市街地再開発」は、自由が丘のシンボル、女神像が立つ駅前広場のすぐ右手にある街区で、地上14階建てのビルに店舗、オフィス、住宅などが入る予定で、2025年度の竣工を予定しています。

 

この先、再開発ビルを建設しながら、どのように「自由が丘らしさ」を残していき、不足している要素を取り入れていくかが課題です。

 

もう少し時間はかかるかもしれませんが、「働く場の機能」と「文化・エンターテインメント性」を高めながら、大きく自由が丘の街は変貌していくことでしょう。

 

 

東浦 亮典

東急株式会社

常務執行役員

 

※本連載は、東浦亮典氏の著書『東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ

東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ

東浦 亮典

ワニブックス

東急電鉄に所属していた2018年に、前作『私鉄3.0』で「電車に乗らなくても儲かる私鉄の未来」を提言した東浦亮典氏。あれから4年、電鉄業界はコロナというこれまでにないパンデミックに見舞われた。テレワークの普及で働き方が…

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