(※写真はイメージです/PIXTA)

月収が高く、貯蓄も十分。愛する家族だっている。そんな典型的な勝ち組サラリーマンでも、定年後にお金に困るケースがあります。なぜなのでしょうか? 長岡FP事務所代表の長岡理知氏がAさんの事例をもとに解説します。

「年金分割」、そして「財産分与」…

「年金の分割の手続きをお願いします。それと、この家の財産の半分はいただきます」

 

離婚に関する知識のないAさんは妻がなにを言っているのかわかりませんでしたが、妻は弁護士事務所からもらったというリーフレットを見せました。

 

そこには離婚時の「年金分割」の制度の概要が書かれてありました。離婚をしたときには公的年金を夫婦で分割することができるという内容でした。ただし年金分割とはいっても、夫の実際の支給額の半分を妻に渡すという意味ではなく、夫の婚姻期間中の「厚生年金記録の半分」を妻に分割するということです。

 

Aさん夫婦の場合、夫24歳、妻22歳で結婚し、妻は27歳から60歳まで3号被保険者として国民年金に加入していました。これでは妻の老齢年金は約79万円程度しかもらえず、到底生活していくことはできません。

 

そのため夫の厚生年金記録のうち、婚姻期間中の半分を妻にわけるということになります。

 

「3号分割」と「合意分割」の2種類ある年金分割制度

年金分割には2種類あり、「3号分割」と「合意分割」の制度があるということもわかりました。

 

3号分割は平成20年4月1日以降から60歳までの婚姻期間中の厚生年金記録を「夫の合意がなくても」分割する制度です。

 

合意分割は婚姻期間中のすべての厚生年金記録を「夫の合意のもとに」分割する制度です。

 

妻のBさんは合意分割を要求しています。Aさんの場合は24歳から65歳までの厚生年金記録を妻に分割することになります。

 

正確な金額は年金事務所にて「年金分割のための情報通知書」を請求しなければわかりませんが、ざっくりと計算してみると次のようになります。

 

離婚しなかった場合

夫の老齢年金の支給額 約315万円

妻の老齢年金の支給額 約79万円

 

離婚し年金分割した場合

夫の老齢年金の支給額 約203万円

妻の老齢年金の支給額 約191万円

 

妻の支給額が大幅に大きくなる一方、夫は減ってしまいます。

 

「こんなバカなことがあるか」と夫のAさんは憤ります。

 

婚姻中に築いた財産を半分に分割する「財産分与」

さらに民法で定められているとおりに、婚姻中に築いた財産を半分に分割することができます。Aさんの財産は妻のBさんの協力があって築かれたものなので、妻Bさんは半分を受け取ることができるのです。これを「財産分与」と呼びます。

 

Aさんが結婚した当初、結納金や結婚式で使ったため預貯金はゼロでした。結婚後に築いた預貯金で離婚時に残っていたのは6,500万円。これを按分することになります。しかしAさん名義の住宅ローンが約1,000万円残っていて、夫Aさんが引き続き住む予定であることから、1,000万円を預貯金から差し引き5,500万円を半分にすることに。

 

2,250万円を妻に分与することになりました。

 

プライドの高い夫のAさんは弁護士に依頼するなどして妻と揉めたくなかったため、妻が要求するとおりの形で分割に合意しました。

 

 

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※プライバシーを考慮し、実際の相談内容から一部変更しています。

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